ゴールドウインが、自社ブランド「ゴールドウイン(Goldwin)」の海外戦略を加速している。10年後に売上高500億円(2024年3月期実績は32億円)、アジア100店舗体制を掲げた“ゴールドウイン500”プロジェクトを、7月に同社の新中期経営計画の骨子として発表した。21年に開業し、既に売上規模で日本の店舗を抜いているという北京店に続いて、中国では8月に成都、9月に上海にも大型直営店を出店済みだ。25年以降、韓国や欧米でも出店を計画している。「ゴールドウイン」がブランドとして目指すあり方や企業ゴールドウインが掲げる姿勢を、渡辺貴生社長のインタビューを交え深掘りする。
「世界中の人が長く着られる、
普遍的で美しい製品を作りたい」
ゴールドウインは、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などの海外ブランドと提携し、日本市場に合うようにデザイン性と機能性を独自開発して成長してきた企業だ。一方で、自社ブランドの育成は遅れていた。「自分たちの考えを自由に形にしてお客さまの役に立つ製品を作り、世界中で自分たちの存在を知っていただくには、提携ブランドでは限界がある」と渡辺貴生ゴールドウイン社長。世界に目を向けていく中で、渡辺社長が現職に就いた20年以降、自社ブランドの「ゴールドウイン」でフィロソフィーやコンセプトの部分から見直しを進めてきたという。
従来は競技や種目を軸にした開発が一般的であったスポーツウエアにおいて、「ゴールドウイン」ではパフォーマンス(機能性)やファッション、ライフスタイルを高次元でミックスしていくようなブランドのあり方を目指している。「強く抱いているのは、普遍的な製品を作りたいという思い。どの国のどんな人が手に取っても同じ感覚を呼び覚まし、陳腐化することなく長く着られるデザインを追求している」と渡辺社長。近年はラグジュアリーブランドなどもスポーツやアウトドア領域に進出し、“プレミアムスポーツウエア”市場が形成されつつあるが、「企業として長年築いてきた高いパフォーマンス性と、リジェネラティブ(環境再生型)であることの2点を重視する点が、われわれは他ブランドとは異なる」と分析する。
リジェネラティブという面では、ゴールドウインは15年からスパイバーと共同研究し、構造タンパク質「ブリュード・プロテイン」の開発も進めてきた。「『ブリュード・プロテイン』を、石油由来の合成繊維の代替として世界に広めることはわれわれの大きな使命」と渡辺社長。「長く使えるもの、圧倒的に機能に優れたものを作りたい。どこよりも機能性の高い製品を美しくデザインできる会社になりたいと昔から思ってきた。機能性には、環境負荷を限りなくゼロにするということも含んでいる。“循環性”“越境性”“共創性”の3つをキーワードに、『ゴールドウイン』で“プレミアムスポーツブランド”としてのポジションを確立する」と語る。
ゴールドウインとして24年4月には、「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」というパーパスも新たに制定した。「人類の歴史で気候変動は今が一番厳しい状況にあるが、それを招いたのも人類。自然を収奪し、産業を前進させるあり方でよかったのか。人間も自然の一部と認識し、事業の進め方、暮らし方を変える必要がある」と渡辺社長。「お客さまも事業のパートナーとして、多くの人が積極的に環境を守れるような、そんな事業をわれわれがデザインすることを目指す」と続ける。
10年後にアジア100店体制、
北京店は既に年間売り上げ2億円
1 / 5
10年後に売上高500億円を目指す「ゴールドウイン」にとって、核となる地域は中国、日本、韓国。10年後の目標店舗数は、フランチャイズを含めアジアで100店だ。そのために中韓では、現地企業と販売合弁会社も設立した。最大市場と期待する中国では、今後年間4店のペースで、一級都市を中心に出店していく。今秋出店した成都、上海に続き、年内に杭州、南京にも出店予定だ。21年に出店した北京店は、既に年間売り上げ2億円規模となっている。
「スポーツは老若男女が楽しむことができ、日常でもスポーツウエアを着る人は多い。だからこそ、スポーツウエアでは国や文化を超えたデザインが可能」と渡辺社長。10年後に500億円という目標を「野心的」などと評する声もあるが、「全くそうは思わない。『ザ・ノース・フェイス』も過去10年で規模は5倍になった。ブランドは、何か1つ現状を突き抜けるきっかけがあれば、共鳴してくれる人に支えられて成長していく。それは私自身が『ザ・ノース・フェイス』で経験したことだ」と続ける。
24年秋冬は
「OAMC」ともコラボ
1 / 5
「ゴールドウイン」は、ゴールドウインが企業として長年つちかってきた機能性と共に、デザインとしての美しさも強く探求している。グローバルでの認知強化のために、6月には25年春夏のパリ・メンズファッションウイークに合わせ、マレ地区で初めて単独展示会も開催。クリエイティブチームにも海外有力メーカーのR&D出身者などが加わり、グローバル標準でのモノ作りが進んでいる。
そうした動きを象徴するのが、24年秋冬に打ち出している「OAMC」とのコラボレーションだ。現在、「ジル サンダー(JIL SANDER)」のデザインも手掛ける「OAMC」共同創業者のルーク・メイヤー(Luke Meier)は、今回のコラボについて「深い知識と高い品質を誇り、パフォーマンス製品のリーダーであるゴールドウインと仕事ができることを楽しみにしていた」とコメントしている。「ゴールドウイン」では25年春夏以降も、注目度の高いコラボをいくつか企画しているという。
人間と自然の関係性をデザイン
「モノを売って収益を得るだけでなく、環境を正しい方向にデザインしていくような事業を今後は目指す」。渡辺社長がそう話すように、ゴールドウインは人が自然を楽しみ、その中で環境を守り次世代に引き継いでいくような取り組みを強めている。22年春夏に、東京・六本木や創業地の富山で行った「プレイアースパーク(PLAY EARTH PARK)」はその一例だ。スポーツの起源である遊びを通し、子どもたちが未来につながる体験を得られることを目指したイベントで、両地でファミリー層を中心に約5万2000人を集客した。
「環境をデザインする」という考えのもと、富山・南砺では、自然と遊ぶ公園「プレイアースパーク ネイチャリング フォレスト(PLAY EARTH PARK NATURING FOREST)」を計画中だ。27年初夏の開業予定で、SUPや釣りが楽しめる桜ヶ池の周りに、キャンプ場、フラワーパーク、農園、レストラン、アウトドアアクティビティー施設を設ける。周辺地域とも連携し、クライミングやトレッキング、冬季はスノースポーツなど、さまざまなアクティビティーが楽しめるようにする。
ゴールドウイン カスタマーサービスセンター
0120-307-560