PROFILE: ジュゼッペ・フェラーロ/アルジタル創業者
グローバルオーガニックブランド「アルジタル(ARGITAL)」は1979年にイタリア・シチリアで誕生し、現在約35の国と地域で展開する。長らく続くオーガニック・ナチュラルコスメブームの波に翻弄されることのない強さはどこにあるのか、創業者のジュゼッペ・フェラーロに聞いた。
――:生化学者と聞いていますが、まずはブランド立ち上げの背景を聞かせてください。
ジュゼッペ・フェラーロ博士(以下、フェラーロ博士):ミラノの大学で生化学を研究しつつ、並行して鍼灸やハーブ、マクロビオティックなども研究していました。1970年代当時、マクロビオティックの研究者である久司道夫が考案した久司マクロビオティックスが欧米で非常に注目されていたのですが、これは陰陽の考え方を食に応用したように思えたし、鍼灸にも通じるものがあり、すごく興味を引かれました。そうして友人と自然食品などを輸入する店を経営し、その一方でホリスティックセンターも創設。そこでは自然医学やヨガなどのセミナーを開いていました。ショップではクレイ入り歯磨き粉をフランスから輸入していたのですが、それが全く良くないことを顧客の一人であるオーガニック食品のパイオニアに話したところ、「それなら自分で作ってみたら?僕が販売するから」と勧められて作ったのが、アルジタルの始まりです。
――:その後「人智学(アントロポゾフィー)」を核にブランドを展開していくわけですね。
フェラーロ博士:人智学に惹かれる理由は、それが化学も物理学も全てをエシカルにまとめる力を持っているから。アルジタルでの仕事のほとんどは、ルドルフ・シュタイナーの残したさまざまな概念や考え方から多くのインスピレーションを得ています。例えば商品原料は必ず有機栽培やバイオダイナミック農法によるものを選択します。そうでない原料は簡単に安く手に入れることができますが、殺虫剤や化学肥料を使用した原料を使うことは、間接的に土地の砂漠化に貢献することになる。私たちは土からの恩恵を多大に受けているのですから、それを守る義務があります。西洋文化では「全ての概念の中心に人がある」と考えますが、今はパラダイムの転換が必要で、あらゆる考え方の中心に地球を置くべきなのです。
――:アルジタルのキー成分である「グリーンクレイ」を、博士はどのように捉えていますか?
フェラーロ博士:シチリアのシクリの丘で採掘されるグリーンクレイを使っていますが、シクリの丘は約1600万年前は深い海底でした。その当時の地球の生命力を封じ込めたまま海泥となって存在しているのです。人智学には「ポラリティ(両極性)」という考え方があり、これは陰陽に似ていますが、両極が分離することなくつながりを持って存在し、互いに影響を与え合うと考えます。これに当てはめるとクレイには光の極と暗闇の極があり、光にはシリカが、暗闇には石灰が対応し、体全体あるいは肌の全ての層に働きかけると考えます。だからグリーンクレイは古来、民間療法で飲用されていたし、アルジタルではほぼ全ての商品に配合しているのです。
――:極めてユニークな考え方です。新商品はどのように発案するのですか?
フェラーロ博士:「今みんなが必要としているものは何か?」から発想しますね。現在開発しているのはヤドリギのエキスを配合したクリームです。ヤドリギエキスは古来、鎮静作用のある生薬として使われていましたが、それをグリーンクレイと組み合わせてニキビ肌用のクリームとして進めています。今後もオーガニック植物とグリーンクレイを使って、従来型のコスメに代わる商品を提案していきます。