「ディオール(DIOR)」がパリで発表した2025年春夏コレクションの出発点は、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が1951-1952年秋冬オートクチュール・コレクションのためにデザインした“アマゾーヌ“ドレス。そこから、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は、ギリシャ神話に登場する弓術を得意とし、戦いと狩猟を好む女性だけの部族アマゾーン(複数形ではアマゾネス)に思いをはせた。
ショーのオープニングには、作品にアーチェリーを用いる女性アーティストのサグ・ナポリ(SAGG Napoli)が登場。長いランウエイを縦断するように中央に設けられたスペースで弓を射るパフォーマンスを行なった。その姿は、まさに現代のアマゾーンと言えるだろう。今季のデザインのポイントは、そんなナポリもまとったワンショルダーや、“アマゾーヌ“ドレスからヒントを得たアシンメトリーなシルエット。アクティブウエアのようなボディースーツをはじめ、テーラードジャケットやポプリンシャツ、ドレスも片方の肩があらわになったデザインで仕上げた。
そこに組み合わせるアイテムは、70年代初期のロゴをデザインに組み込んだストライプをサイドにあしらったトラックパンツやメッシュドレスをはじめ、チェッカーフラッグチェックやストライプを部分的に配したバイカージャケットやパンツ、ベルト&バックルのディテールが特徴のブルゾンやパンツなど。バッグやシューズもスポーティーなスタイルが充実する。色は黒と白が中心となり、そのコントラストがグラフィカルで力強いイメージを強調した。一方、終盤にはクチュールメゾンならではの繊細で煌びやかな装飾を施したラップスカートやドレーピングを生かした幻想的なドレスも披露した。
キウリは、近年のクチュール・コレクションでも神話の世界から着想を得た女神のようなドレススタイルを提案しており、7月のクチュールではそこにスポーツの要素を融合することでアスリートへの敬意を表現。パリオリンピックの開会式でも多くの衣装を手がけたキウリは、スポーツの世界に大きな刺激を受けているようだ。2016年の就任から一貫して女性に力や自信を与えるメッセージを発信し続けている彼女は今回、アスレチックの要素を取り入れたモダンなワードローブを通して、勇敢で自信に満ちた現代の女戦士たちの姿を描いた。