肌の美しさを保つにはスキンケアが大切だということは周知の事実だろう。では、スキンケアをする上でどこに働きかければ効果が期待できるのか。その1つが「基底膜」という肌内部に存在する膜へのアプローチだ。基底膜は、表皮と真皮の間に存在し、厚さわずか0.1μm(マイクロメートル)の非常に薄い膜ではあるが、その役割は大きな可能性を秘めている。基底膜について、1991年から30年以上にわたって研究を続けているパイオニア的存在が資生堂だ。同社は基底膜研究を続ける中で、紫外線によって基底膜がダメージを受けると光老化が進行しエイジングサインが現れることを発見。さらに、基底膜にダメージを与える酵素を抑制し、バリア機能や潤い、シワに効果を発揮する高機能成分「コアキシマイド」を独自開発した。その研究の最先端に迫るべく、エディター・ライターの松本千登世氏が資生堂の研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(以下GIC)」を訪問。入山俊介研究員の解説とともに、肌本来の再生力を取り戻す次世代のスキンケアアプローチ「基底膜ケア」に迫る。
松本千登世氏がエバンジェリストとして
資生堂の研究開発拠点を訪問
美のリーディングカンパニーの
知見に迫る
GICは基底膜研究をはじめ、資生堂の最先端技術を用いた研究が日々行われている場所である。今回は美を伝えるエバンジェリストとして松本氏がその内部に潜入し、基底膜にアプローチする画期的な成分「コアキシマイド」を見いだすに至った実際の研究実験も体験した。入山研究員の解説により、肌再生の源である基底膜の重要な役割、毎日のケアがいかに大切であるかについて理解をさらに深めた。そして同時に、世界にも認められた資生堂の技術力の高さに改めて感嘆した。
スキンケアのプロも注目
基底膜ケアへの期待
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松本千登世 /
エディター・ライター
世界をリードする資生堂の基底膜研究。その中核を担う入山俊介研究員がジャーナリストや編集者など美容のプロにぐるりと囲まれ、質問攻めにあうシーンを何度見たことか!聞くたび全く新しい発見に驚かされ、肌や美の可能性が広がるのを実感する。基底膜研究の進化は、エイジングを恐れない時代への着実な歩み。そう確信し、胸躍るから、私たちはこんなにも夢中になるのだろう。実は入山研究員に、なぜこの職に就いたのか問うたことがある。「エイジングサインに気持ちを沈ませる人を見て、誰もがいつまでも明るく生きていける世の中になったら、と」。ついに辿り着いた最新のソリューションが教えてくれるのは、基底膜研究は人生の希望のために、という真実。決して大げさでなく、そう思う。
岡部美代治 /
ビューティサイエンティスト
皮膚は表皮と真皮の2枚構成になっており、表皮と真皮は基底膜という薄い4型コラーゲンの膜で仕切られている。その基底膜に着目して資生堂が研究を始めたのは30年以上も前の1991年のこと。縁があり、中心となって基底膜研究をされていた研究者から苦労話や美肌に関する新知見を伺う機会があり、資生堂こそ基底膜研究のパイオニアだと感じた。基底膜は表皮と真皮の司令塔として機能していることが解明されているほか、紫外線ダメージなどを受けると表皮幹細胞が減少して光老化が促進されてしまう。それには2種の酵素が関わっていることもわかり、基底膜ケアのキーポイントになるという。毎日の美肌作りのためにも基底膜ダメージのリンクをケアする必要性は理論的に大いに納得できる。
水井真理子 /
トータルビューティアドバイザー
資生堂は30年以上にわたって「基底膜」の研究に取り組んできたパイオニアとして、2万種を超える候補の中から選び抜かれた独自成分「コアキシマイド」を開発。肌の根幹ともいえる基底膜ケアの新しいステージを切り開いてくれるような「コアキシマイド」は、基底膜にダメージを与える酵素を抑制することで表皮と真皮の両方への効果が期待できるという、資生堂が生み出した革新的な成分。そして、基底膜という繊細な領域にまでアプローチできるこの技術こそが資生堂の誇る美のテクノロジーであり、美しい肌へのパスポートのように未来の肌を守るカギとなるだろう。
次田哲也 /
スキンケア・
サイエンスコミュニケーター
基底膜は、表皮と真皮の境界にある角層の約1/200の厚みしかない、細胞外マトリックスである。表皮細胞を安定に保ち、真皮をつなぎとめる役割として知られている。資生堂は、30年以上前からこの基底膜研究を進めるパイオニア的存在である。肌は紫外線暴露により、この基底膜を断裂・多層化し、膜上の表皮幹細胞を減少させる。原因は、ヘパラナーゼとMMP-9の2つの酵素。資生堂は約2万種以上の成分から、この2つの酵素を同時に抑制する「コアキシマイド」の独自開発に成功した。この功績は高く評価したい。「コアキシマイド」は、分解酵素の働きを速やかに抑え、バリア機能の回復、肌のうるおいやシワへの効果を示した。紫外線量も増加し続ける昨今、日々の基底膜ケアは今後重要であると感じている。
弓気田みずほ /
美容コーディネーター、
ユジェット代表取締役
「表皮」「真皮」というワードは知られていても、その境目にある「基底膜」という存在はあまり知られていないのではないか。基底膜は角層を含む表皮の細胞を生み出すと同時に、内側にある真皮の細胞ともコミュニケーションをとり、肌のハリ・弾力を保つ役割を果たす。資生堂はいち早く、基底膜のもつ重要な働きに着目。多くの歳月をかけて、2万種以上の候補から基底膜のダメージ要因に根本的に対処する成分=「コアキシマイド」を見いだした。肉眼で見ることのできない肌の内側で起こる事象を捉え、新たな成分を探索し、効果的に働く処方を創り出す、こうしたすべてのプロセスにおいて、資生堂のサイエンスは最先端を走り続けている。だからこそ、資生堂の新知見はいつも驚きをもって迎えられているのだと思う。
肌再生の源・基底膜へのアプローチ
たどり着いた答えは
高機能成分「コアキシマイド」

PROFILE:2002年東京工業大学生命理工学部卒業。04年に東京工業大学大学院生命理工学研究科修士課程修了。資生堂に入社後、13年に東京農工大学で学位(農学博士)を取得。22年より現職。皮膚科学の基礎研究部門にて基底膜研究、幹細胞研究に従事している
WWD:肌再生の源ともいわれる、基底膜とは?
入山俊介研究員(以下、入山):肌内部の表皮と真皮の間にある、厚さわずか0.1μm(マイクロメートル)の薄い膜が基底膜です。基底膜は表皮と真皮をつないで情報や物質をやりとりする働きを持ち、健やかな肌を再生するのに重要な役割を果たす、まさに肌再生の源として注目のシート状のタンパク質構造体です。
WWD:基底膜の働きについて。
入山:基底膜には3つの働きがあります。1つ目は、表皮と真皮を接着剤のようにつなぎ留めて肌の正しい形状を維持すること。2つ目は、表皮と真皮のコミュニケーションを通して、栄養素などの移動を制御し、肌を健やかな状態に保つこと。3つ目は、表皮幹細胞の維持です。基底膜の表面には表皮細胞を生み出す表皮幹細胞が並んでいますが、近年の研究結果により、基底膜には表皮幹細胞を育み表皮と真皮を安定した状態に保つ役割があることが分かりました。
WWD:なぜいま「基底膜」ケアが重要なのか?
入山:基底膜は表皮にも真皮にも作用する源となる部分であり、美容の領域やエイジング領域、皮膚の老化領域において基底膜ケアが重要であると啓発活動できるくらい情報や知見が集まったためです。これは、当社が早くから基底膜が「肌再生の源」であるという新たな考えのもと研究を蓄積してなせたことですね。紫外線など外的要因により基底膜がダメージを受けると、表皮のバリア機能が低下して乾燥や肌荒れの原因となります。同時に、真皮のコラーゲンが減少してシワやたるみなどエイジングサインが現れやすくもなる。そのため、基底膜を健康な状態に維持することで表皮や真皮も良好な状態が促進され、美肌を保つことにつながります。
WWD:資生堂の研究により、肌の構成成分の分解酵素である「酵素ヘパラナーゼ」と「酵素MMP-9」が紫外線によって活性化することで基底膜にダメージを与え、光老化を促進していることを突き止めた。さらに、この2大酵素の働きを抑制する成分として「コアキシマイド」を開発した。
入山:研究を重ね、2万種を超える候補の中から、2大酵素の働きを同時に抑制する成分を見いだしました。「コアキシマイド」は、「酵素ヘパラナーゼ」の活性を3時間で、「酵素MMP-9」の活性を30分で抑制することが可能です。速やかに分解酵素の働きを抑えることで、バリア機能・肌の潤い・シワなどの表皮、真皮への効果が確認されています。
WWD:今後の基底膜研究について。
入山:基底膜研究は構造の変化、機能の発見、肌再生の源と進んできているが、今後も新知見に期待してほしいです。近年生活者は、より一人ひとりが持って生まれた今ある肌をどれだけ大切にし、良い状態にするかということに注目しつつあると感じます。そのために、研究もさまざまな分野で融合できれば、より生活者のスキンケアへの選択肢も広がると考えます。
「コアキシマイド」で
新たなスキンケアアプローチ
資生堂の基底膜研究により、基底膜にダメージを与える2大酵素が「酵素ヘパラナーゼ」と「酵素MMP-9」であると特定した。そしてこの2大酵素の働きを同時に抑制する高機能成分として「コアキシマイド」を独自開発。「コアキシマイド」のアプローチにより基底膜の健康な状態が維持されると表皮幹細胞が安定化する。これにより、肌のバリア機能に重要な成分のフィラグリンや表皮ヒアルロン酸、コラーゲン産生が促進されて肌のバリア機能回復や潤いアップ、シワの減少が期待できる。基底膜研究のトップランナーである資生堂の30年の研究で行き着いた答えが「コアキシマイド」の開発であり、同成分を用いた「基底膜ケア」という新たなスキンケアアプローチの誕生である。
※技術に関する情報です
MOVIE DIRECTION : KEIICHIRO TOKUNAGA(INFAS.COM)
MOVIE CAMERA : NOBUTAKA SHIRAHAM,
KATUHIKO MIYATA,YUKI FURUSAWA
HAIR & MAKEUP:NOZOMI FUJIMOTO (CHITOSE MATSUMOTO)
EDIT & TEXT : WAKANA NAKADE
資生堂
https://corp.Shiseido.com/jp/inquiry