クロスカンパニーは、初任給の引き上げとベースアップを実施する。大卒の初任給は現状の19万6000〜21万6000円を2017年度から22万1000円に引き上げる。8月からは既存社員に対して平均1万158円のベースアップも行う。併せて転居を伴う転勤のない「地域限定職制度」を8月から導入。店舗の販売員を対象にした制度で、希望者には自宅から通勤可能な距離での配属を行う。
ファッション小売業はこの数年、長時間労働や給与の安さなどが若い世代に嫌われ、販売員の確保が困難になっている。年100店以上の出店を進めるクロスカンパニーはこれまでも独自の雇用改善策を講じてきたが、初任給の引き上げやベースアップなど実利をアピールすることで優秀な人材を囲い込む考えだ。石川康晴・社長は常々「ファッション業界で最も給料の高い会社にしたい」と公言しており、その実現に向けた制度設計に本腰を入れる。
同社の16年1月期連結業績は積極的な出店によって増収だったものの、既存店の苦戦が響いて減益になる見通し。石川社長は「給与引き上げによって約7億円のコスト増になる。減益にも関わらずベアを実施することに社内から異論もあった。だが、私は引き上げないことによるリスクの方が大きいと考えて決断した。優秀な人材を確保できなければ、将来の出店計画にも影響が及ぶことが目に見えている」と語る。