ヴィヴィアーノ・スー(Viviano Sue)=デザイナーによる「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」が勢いづいている。ウィメンズの2025年春夏コレクションは、武器である“かわいい”クリエイションに大人のムードが加わり、ブランドの世界観をさらに強固にしつつある。ショー会場はスペイン様式の建築が美しい小笠原伯爵邸で、BGMはエディット・ピアフ(Édith Piaf)の「La Vie en rose」(邦訳:バラ色の人生)だ。
ガーデニングと服作りの共通項
天塩にかけて育てる愛
前シーズンは、自身の生い立ちに向き合い、生まれ故郷である中国のエッセンスを落とし込んだ。続く今季は、ヴィヴィアーノ=デザイナー自身の庭を着想源にしており、コレクションテーマも“My Garden”と直球だ。「大好きなバラを育てる中で、植物を育てることと、服作りはとても似ていると気づいた。適切な形で愛を注ぐほど、どちらも良い結果を返してくれる」。全33ルックのうちコレクションピースは3体で、8色のグリーンのチュールを使用したガウンは、葉や木々のグラデーションを表現。ラッフルが胸元を飾るパステルピンクのドレスは、木々の中に佇む一輪のバラを、ホワイトドレスは、人間と自然の調和を表したという。
コレクションには、さまざまな形でバラのモチーフを散りばめる。シルクのバラをあしらったウールコートや、朝露のような小粒のパールが全面に付くチュールブラウス、白地に金色のバラをジャカードで描いたパフスリーブドレス、ピンクのバラをプリントしたチュールドレスなどは、「ヴィヴィアーノ」らしい華やかさ。中でも、「この生地かわいいでしょう?」とデザイナーが推すのは、グリーンのミニドレスに用いた、スパンコールをチュールで挟んだ生地だ。
大人なかわいさへ脱皮
ビジネス拡大を視野に
新たに加わった大人のムードは、ベストやパンツ、ジャケットをドッキングしたフリルドレスなど。フォーマルな要素も差し込むことで、持ち前のロマンチックな世界観を拡張し、強く磨き上げた。7月にスタートしたメンズラインとも呼応するアプローチは、ビジネスを意識したもの。「“かわいい”だけでは取り扱ってくれないショップもあるから、そうではない一面も加えなきゃと思った」とヴィヴィアーノ=デザイナー。現在の卸先は約30で、近年は売り上げを倍々のペースで伸ばしているという。
デザイナーは誰よりもショーを愛し、ゲストを楽しませようとする意識が強い。そのポジティブな姿勢が好調なビジネスにも影響しているのだろう。ショー前のリハーサルでも、モデルに前向きな言葉をかけ続ける。「Just enjoy the show!You guys are beautiful!(ショーを楽しむことに集中して。みんなきれいだよ)」。