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タペストリーのカプリ買収はどうなる? 米連邦取引委員会が提訴した裁判で各社トップが証言台に

米連邦取引委員会(FTC)が「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK以下、ケイト・スペード)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)による「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」を擁するカプリ・ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収案件を停止する仮処分を求めた裁判が進行中だ。9月には、約1週間半にわたってさまざまな人物が出廷し、証言を行った。

最初に証言台に立ったのは、カプリのジョン・アイドル(John Idol)会長兼最高経営責任者(CEO)だ。

アイドル会長兼CEOは、「マイケル・コース」がまだ年商1700万ドル(約24億1400万円)と小規模だった2003年に同ブランドのCEOに就任した。同氏の指揮の下、16年には売上が47億ドル(約6674億円)に急成長し、証言の中で、ニューヨークのオフィスを出ると、通りを歩く女性の7人に1人は「マイケル・コース」のバッグを持っていたと述べた。23年には売上が35億ドル(約4970億円)に減少し、今では同ブランドのバッグを持つ女性を見かける確率は「運が良ければ200人に1人」になったと述べた。

アイドル会長兼CEOは、ハンドバッグ市場は競争が激しく、「コーチ」も「マイケル・コース」も厳しい戦いを強いられていると主張。「われわれは上からも下からも圧迫されている」と述べ、「マイケル・コース」が過去に市場シェアを奪ったラグジュアリーブランドが、逆にそれを取り戻そうとしていると述べ、「われわれはハンドバッグ市場全体で競争していると考える」と主張した。

他方、FTCはこれに対して異なる見解を述べている。

FTCが“アクセシブル ラグジュアリー(Accessible luxury)”と呼ぶハンドバッグ市場において、タペストリーが過度な影響力を持つことで消費者に悪影響を与える可能性があると強調。「コーチ」「ケイト・スペード」「マイケル・コース」が米国における同ハンドバッグ市場の半分以上を占めており、「トリー バーチ(TORY BURCH)」や「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」といった競合は、これらの巨大ブランドに比べると影響力が小さいと指摘した。

FTCの代理人弁護士は、「本件は、働くアメリカの女性たち、中流階級の女性たちの裁判だ。彼女たちはアウトレットやメイシーズ(MACY’S)に行き、好きなアメリカンブランドを探す。彼女たちは手頃な価格で手に入れたいと考えている」と主張。「コーチ」や「マイケル・コース」のバッグを購入する消費者の半数は、年収7万ドル未満(約994万円未満)の家庭で、「最大の競合同士が合併するのは、アメリカの消費者にとって良くないことだ」と述べた。

アイドル会長兼CEOが証言した翌日には、タペストリーのジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)CEOが証言台に立った。

FTCが定義しようとしている“アクセシブル ラグジュアリー”ハンドバッグ市場についてクレヴォイセラCEOは、「“アクセシブル ラグジュアリー”というのは、当社の競争戦略を投資家に対して説明するために使っている言葉であり、消費者を引き付けるための表現ではない」と指摘。この言葉はあいまいであり、タペストリーが内部文書で使用していたものの、“アクセシブル ラグジュアリー”という視点から競争を見ておらず、「誰もこの言葉の意味をすり合わせることができないため、競合他社を表すには不適切だ」と主張した。

また、クレヴォイセラCEOは、どの価格帯のブランドも競合に当たると述べ、「ラルフ ローレン」がハンドバッグ市場に本格的に参入していることを例に挙げた。また、「ヴェロニカ ビアード(VERONICA BEARD)」「クルト・ガイガー(KURT GEIGER)」「テルファー(TELFAR)」、そしてアクティブウエアの大手である「ルルレモン(LULULEMON)」についても競合だと述べた。

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