「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク 2024」は日本全国500店以上のフレンチレストランが参加する国内最大級グルメイベントだ。10月14日まで開催中の同イベントでは、ダイナースクラブ会員でなくても、イベント特別価格のコース料理を楽しむことができる。料金は、2500円、5000円、1万円(レストランにより異なる)から選ぶことができ、星付きレストランや地元のお店で気軽にフレンチを試せるイベントになっている。今年のフォーカスシェフに選ばれた東京・二子玉川の人気店「ナチュラム(NATURAM)」の杉浦和哉シェフと特別コースについて紹介する。
秋を感じる食材をエレガントに仕上げたコース
夏から秋へ移行する季節を食材で表現したという特別ランチコース(2500円)。青トロナスとカツオのクレソンソース添えの前菜は、サラダ仕立ての紅ダイコンをのせた色鮮やかな一皿。ナスのトロトロした食感に、香ばしいカツオの旨味とサラダの甘酸っぱさが融合し、マリネされた各食材の味わいとソースが引き立て合う。メインの肉料理は、秋を感じさせる色合いの古白ドリのロースト。辛味のあるジンジャーソースを合わせることで肉料理なのにさっぱりとした仕上がりだ。一方で、バターナッツカボチャのピューレが濃厚な味わいがプラスされている。肉に添えられたジャガイモのドフィノワは絶品。ミルフィーユ状にしたジャガイモグラタンが、これほど美味しくなるとは驚きだ。マッシュルームを添えるなど、シェフの丁寧な仕事がうかがえる。デザートは、グレープフルーツとシャーベットを添えたムース。河内晩柑という和製グレープフルーツの爽やかな酸味が特徴で、レモンバームのシャーベットを添えることで複雑かつ驚きのある味わいだ。どれも彩りが美しく、季節感あふれるエレガントな料理に仕上がっている。ランチに訪れる二子玉川マダムも多いというのも納得だ。
“みんなの街のためのレストラン”を目指して
子どもの頃からキッチンで母親の料理を手伝うのが好きだったという杉浦シェフ。高校へ進学したものの、勉強にはあまり関心がなく、進路も決まらなかった。担任の先生からは、「魚市場か、パチンコ屋の店員だな」と言われていたという。彼は、「シェフになりたい」と地元の洋食屋へ就職して厨房で働く。店の料理長からフランスでの修行話を聞き、20歳で渡仏。杉浦シェフは「フランス語も話せず、ビザもなく無謀だった」と話す。パリのレストランへ飛び込みで「働きたい」と行っても相手にされず、資金が尽きた頃に日本人シェフに出会いブルターニュ地方の店を紹介された。そこで住み込みで働き、南仏のマントンのレストランで修行して帰国。その後、都内やパリのレストランでシェフとして活躍後、18年に「ナチュラム」をオープンした。
同店のコンセプトは、気軽に入れるフレンチだ。杉浦シェフは、「フレンチというと敷居が高いイメージがある。カジュアルだけど味は本格的な店にしたかった。いろいろな人にフレンチを楽しんでほしい」と話す。また、使用する素材や器は“メード・イン・ジャパン”にこだわっている。日本の四季や日本人の感性をフランス料理で表現しているという。杉浦シェフが目指すのは、“街のためのレストラン”だ。彼が参考にするのは、フランス・オーベルニュ地方のサンボネ・ル・フロワ村に店を構えるミシュラン3つ星シェフのレジス・マルコンだ。マルコンのレストランが村に雇用を生み、村を美食で有名にした。「その土地に必要とされる“あたたかい料理”を提供するレストランにしたい」と杉浦シェフ。「ナチュラム」では、ウエディングなども手掛けており、毎年記念日に同店を訪れるカップルも多いという。若い人からお年寄りまで幅広い層に愛される地元のフレンチとして歩んでいくようだ。