ファッション

英国ファッション協議会のトップ、2025年6月に退任 免税措置の復活などを新政権に求める

英国ファッション協議会(British Fashion Council以下、BFC)のキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)=最高経営責任者(CEO)が来年6月をもって退任する。15年間務めたラッシュCEOは、「役職のバトンを渡し、新章をスタートさせるいいタイミングだ」とコメント。ただし、後任はまだ決定していない。

ラッシュCEOは2009年4月にBFCに入って以降、マネジャーやマーケターだけでなく、資金調達やロビー活動、危機管理といった幅広い任務をこなしてきた。在籍中、7人の首相による政権と5回の総選挙を経験し、ブレグジット(イギリスのEU離脱)や新型コロナウイルスによるパンデミックなどに関する課題を乗り越えるなど、英国ファッション界をリードしてきた人物だ。直近では、英小売のフレイザーズ・グループ(FRASERS GROUP)傘下の英ラグジュアリーECマッチズ(MATCHES、旧マッチズファッション)の事業終了における大きな余波の対処にあたっている。

今年40周年を迎えた非営利団体のBFCの、23年度の売上高は1200万ポンド(約23億2800万円)以上。主には、「ザ・ファッション・アワード(The Fashion Awards、前ブリティッシュ・ファッション・アワード)」開催などでの資金調達が奏功した。同アワードは16年に、よりインターナショナルな催しとなるよう名称や会場、規模を変えて刷新。また、教育や助成金提供、ビジネス指導などで学生や新進の才能を支援するべく、10年間で総額1000万ポンド(約19億4000万円)を集めることを目的としている。

イギリス新政権に、免税復活と国際貿易協定を求めて活動

ラッシュCEOは、ブレグジットにより20年末に廃止された外国人買い物客向けの免税措置の復活と、デザイナーやブランドの利益向上を図る国際貿易取引を積極的に掲げてきた。昨年には、BFCの若手育成プログラム「ニュージェン(NEWGEN)」の組織を支援するため、デジタル・文化・メディア・スポーツ省は2年間で200万ポンド(約3億8800万円)を拠出することを約束した。「ブレグジット以降、デザイナーたちのビジネスは困難な状況が続いている。7月に着任した労働党のキア・スターマー(Keir Starmer)首相による新政権はクリエイティビティーについての理解が期待できそうなので、パートナーシップを組むチャンスがあると考えている」と期待する。

中でも優先的に取り組もうとしているのが、免税措置の復活だ。「私たちはこれが国や企業、そして財務省に利益をもたらすというエビデンスがある。国に負担をかけるということではなく、産業を支援し、機会を創出し、収益をもたらすということ。私はそれを支持し続ける」とラッシュCEO。

「ロンドンはデザイナービジネスを始める最も適した場所」

ロンドンはパリやミラノ、ニューヨークと比べ、大きなラグジュアリーグループや上場企業、投資家が多くない。さらにイギリスには製造業があまりなく、ポンド高のため輸出は高くつく。そのため、人気のあるブランドの多くは、コレクション発表の場をパリに移したり、海外へ販路を拡大したりする傾向があり、活動拠点を移す場合もある。しかし、イギリスに残っているブランドの育成のため、ロンドンをクリエイティブなインキュベーターとするべく、BFCは教育や新しい才能、若手ビジネスのための指導と資金調達に多くの時間を費やしている。ラッシュCEOは「ロンドンはデザイナービジネスを始め、成長させるのに最も適した場所のひとつ。若手デザイナーの将来について、一緒に語り、手助けできることはとても夢がある」と語った。

ラッシュCEOは退任までの9カ月間、免税措置復活に向け、政府へのロビー活動を続ける考えだ。

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