“サステナビリティ”は今やグローバルビューティ産業全般で確固たる基準として定着している。これは世界各国で注目を集めるKビューティを展開する韓国ビューティ企業も同様だ。そこには世界的に原料の透明性は基本となり、生産工程からパッケージングに至るまで、環境に与える影響を細かくチェックし、倫理的な消費を求める消費者が増えている背景がある。深刻化する気候危機に伴い、さらに強化されたグローバル規制も一役買っている。欧州連合(EU)は今年までに初めて強制性を持つ「国際プラスチック条約」を策定する決議を行い、2025年までにプラスチック包装材のリサイクル率を55%まで引き上げると宣言した。
韓国政府もこれに賛同し、プラスチック規制を強化した。拡大生産者責任(EPR)に基づき、"リサイクル困難”等級の包装材の場合、10~20%の分担金割増額を課し、包装材の使用量とリサイクル等級によって分担金費用に差をつけ、温室効果ガス削減のための規制も強化した。23年には発電部門の温室効果ガス削減目標を従来の44.4%から45.9%に引き上げ、再生可能エネルギーを義務的に供給する目標比率も引き上げた。温室効果ガス排出権費用、再生可能エネルギーの義務供給費用を電力小売料金に反映する「気候環境料金制」を新たに導入した。
韓国を代表するビューティブランドもこのような流れを積極的に受け入れている。自社で自然原料を開発したり、再生可能エネルギーを使用したり、ゼロ廃棄物を目指すリサイクルパッケージを開発するなど、そのアプローチもさまざまだ。厳しいことで有名な韓国の消費者にアピールするには、単純なマーケティングスローガンではなく、真正性が必須だからだ。ここでは韓国のサステイナブルビューティのトレンドをリードするアモーレパシフィックとLG生活健康の動向を紹介する。
アモーレパシフィック
「ラネージュ(LANEIGE)」や「イニスフリー(INNISFREE)」などを保有するアモーレパシフィックグループは、「人を美しく、世界を美しく」という使命をもとに、「4R戦略(Reduce, Recycle, Reuse, Return)」を通じ、独自のプラスチック循環モデルを構築してきた。商品の生産から包装、使用、そして廃棄まで、全製品のライフサイクルで発生するカーボンフットプリントを計算するため、全過程評価(LCA、Life Cycle Assessment)体系を構築した。09年からは空き瓶回収キャンペーンを展開し、23年までに2592トンの空き瓶を独自に回収し、再生可能エネルギー面でも国内美容業界初の「RE100」に加入し、25年までにグローバル全事業場で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで調達するという目標を立てた。
アモーレパシフィックの全ての生産事業所には、国際基準に適合する「環境経営システム」が存在する。各事業場は「Plan-Do-Check-Act」の4段階からなる安全、保健、環境管理基準を厳格に遵守することはもちろん、環境管理のための31の項目を守って運営されている。アモーレパシフィックが発表した「2023サステナビリティレポート」によると、23年の再生可能電力使用率は51.4%であり、持続可能なパーム油(RSPO認証パーム油)の使用率は91.5%に達した。 また、アモーレパシフィックは20年の排出量に対する温室効果ガス排出量を40%削減したが、これは22年に達成した28%の削減率から持続的に低下した数値で、目覚ましい成果だ。
アモーレパシフィックのさまざまなブランドラインアップの中でも、イニスフリーは最も積極的に環境に配慮した活動を続けている代表的な企業です。商品を開発する初期段階から商品の内容物とパッケージの環境影響力について考え、研究しているイニスフリーは、03年に代表的な「空き瓶回収」キャンペーンを開始し、24年1月までに約1241トンの空き瓶を回収してリサイクルし、24年4月には空き瓶回収で集められたガラスの空き瓶の一部をリサイクルした「グリーンティーシードヒアルロンセラム地球の月エディション」を発売した。
パッケージの面でも、プラスチックビニール素材の包装材の代わりにFSC認証を受けた紙の包装材と箱を使用している。12年からは地球各地に森を造成する「グリーンフォレストキャンペーン」を実施し、22年までに合計26万本の木を植樹した。このように、イニスフリーは製品に環境性改善の価値を加えることはもちろん、様々なキャンペーンを実践し、環境および社会的責任を果たしている。
LG生活健康
「オフィ(OHUI)」「ビヨンド(BEYOND)」「CNP」などを保有するLG生活健康は、1947年の創立以来、「顧客の美しさと夢を実現する最高の生活文化企業」というビジョンを基に、低炭素経済移行に貢献するために努力している。気候変動対応に積極的に参加するため、22年に「ネットゼロ政策」を宣言し、2030年までに炭素排出量を45%削減し、50年までにカーボンニュートラル達成を約束した。
21年には国内初の「クリーンビューティー研究所」を設立し、化粧品の開発段階から「地球環境、人体の健康、隣人との共生、正直な科学」という4つの核心価値を基に、発売商品の環境影響と持続可能性を評価している。また、廃プラスチック熱分解油由来のプラスチックで作った化粧品容器を業界で初めて商品に導入し、昨年12月に「第13回グリーンパッケージング公募展」で大賞を受賞した。このように、LG生活健康は環境にやさしい素材や製剤、工法を化粧品に適用し、環境にやさしい商品とサービスを開発するなど、気候変動に対応しようとする全世界の努力に積極的に参加している。
LG生活健康が展開するクリーンビューティブランド「スム37°(SUM37°)」は、07年の発売以来、「呼吸する自然のための約束」を守るという使命を掲げ、商品に動物性原料や合成香料、ミネラルオイルなど20種類の成分を排除し、全品目の皮膚刺激テストを完了した。また、環境にやさしいFSC認証に合格した包装材を使用し、焼却インクと再生ガラス及び再生プラスチックを使用して化粧品を生産している。24年5月には、持続可能な「スム37°」のクリーンビューティ哲学を込め、90%再生ガラス、再生プラスチックを使用し、分離排出が容易な構造を適用した“ウォータープルマリンレリーフジェルクリーム”をリニューアル発売し、容器全体をリサイクル素材で作った環境にやさしいリップクリーム“スキンステイモイスチャーリップセリン”を発表した。