毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年10月7日号からの抜粋です)
木村:2025年春夏のミラノコレでは、不安定な今の世界情勢を反映しているのだと思うのですが、デザイナーが考え方や生き方を発信するブランドが多かったです。その中でも「プラダ(PRADA)」はミックス&マッチで、「個性や独創性を大事にしよう」と打ち出しました。各アイテムもトロンプルイユなどのギミックがあるコレクション。ネット上で得た情報だけでなく、自分の体で感じることを大事にしたいという強いメッセージを感じました。
村上:ウクライナやガザでの紛争や米国大統領選挙に見られる分断などの世界的な情勢から、K-popアイドルのパパラッチ騒ぎに明け暮れるファッション・ウイーク、日々の生活に至るまで「これで良かったんだっけ?」という問いかけを、さまざまなブランドから受けましたね。「プラダ」も大人気のENHYPENを会場に呼ぶなど、現状に即しつつも、疑問を投げかけた印象です。ベストは「プラダ」でしたか?
「ディーゼル」のショーで初めて涙
木村:「プラダ」はとても良かったのですが、個人的には「ディーゼル(DIESEL)」のショーで初めて涙しました。14tのデニムの端切れを会場に敷き詰めていたのですが、ショーのあとには観客がその上に寝転がったり、写真を撮ったりとみんなが笑顔でした。ショー自体も良かったですし、終わったあとのその自然発生的な光景に感動して泣いてしまいました。グレン・マーティンス(Glenn Martens)が若い世代にすごく支持されているのは分かっていましたが、こうやって熱狂を生み出すんだと実感しました。
村上:自発的なアクションを誘発するZ世代への理解と空間の作り方―クリエイティブにサステナビリティを表現すると、こんなに共感を集めるというのが可視化されたショーでしたね。
木村:要さんのベストはどれでしたか?
村上:私はマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)がクリエイティブ・ディレクターを務める「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」。ファッションと工芸、アートが見事に融合しており素晴らしかったです。他のブランドもやってはいますが、もはや違う次元に到達。価格は手の届かないものになってしまっていますが、それでも感動的でウルっとしました。「トッズ」が、AI時代において職人のクラフツマンシップこそが大事、アーティフィシャルならぬアーティザナル・インテリジェンスと謳っていてウマい!と思いましたが、まさに“人間らしさ”を称えるようなシーズンでした。