企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はゲオホールディングスのトランスフォーメーションを数字から解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年10月14日号からの抜粋です)
今回はリユースショップ「セカンドストリート(以下、セカスト)」を展開するゲオホールディングス(HD)の決算書を読み解きました。メディアレンタル事業で急成長した企業が、時代に合わせて事業転換を図る流通企業のトランスフォーメーションの事例として取り上げます。
まず、ゲオHD連結の売上高は2024年3月期で4338億円、営業利益は168億円で、営業利益率は3.9%です。過去10年の推移を見ると、売上高、営業利益共に過去最高ですが営業利益率は16年3月期の6.2%が最高です。
同社のリユース事業は02年に中古ゴルフグッズの「ゲオスポーツ」に始まり、08年にフォーユーという古本販売が祖業の中古販売企業にTOBをかけて連結子会社に入れたところから本格化しました。2000年前後にメディアレンタル市場が低迷した時に、リユース市場に着目したのでしょう。TOBによってリユース事業の直営店200店舗とFC店35店舗を獲得し、一気に年商141億円が増え、リユース事業が売り上げ全体の5.6%を占めるようになりました。そのリユース店の直営店が「セカスト」です。
過去10年の商材別粗利率と連結営業利益率の推移
決算説明会資料にある、過去10年の商材別粗利率と連結営業利益率の推移を見てみましょう。まず、現在「ゲオ」を展開するメディア事業(濃紺)は、衰退するレンタル事業(水色)に対して、店舗の売上高を維持するためにメディアやスマホのリユース、家電の型落ち品などの「新品」(黄色)販売を増やしています。粗利率の高いレンタル事業の構成比が減り、単価は高いが、お買い得感を出すために値下げした粗利率の低い「新品」の構成が増え、メディア事業の粗利率は10年間で12ポイントも低下しています(38.1%→26%)。
一方、セカストなどメディア以外のリユース事業(薄緑色)は、メディア事業に比べると、粗利率が高いです。粗利率の高いリユース事業を増やして、グループ全体の粗利率(赤色)が大きく下がらないように維持しているようです。
粗利益を下げて、在庫を強制回転
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