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良品計画2024年8月期は過去最高を更新 新体制で生産・開発体制も強化

「無印良品」を手がける良品計画の2024年8月期決算は、売上高に当たる営業収益と、各段階利益がすべて過去最高を更新した。決算説明会の冒頭で、金井政明代表取締役会長が退任し、堂前宜夫代表締役社長が取締役会長に就き、新社長として清水智(さとし)副社長が昇格することになったことを報告。中期経営戦略については、11月15日に行う経営戦略説明会で発表するため、今回の決算会見では、数字を中心とした説明となった。

セブン-イレブン・ジャパンで商品本部長やQC・物流管理本部長などを務め、22年に良品計画に入社した高橋広隆上席執行役員も取締役に就任予定。11月23日付で始動する新経営体制では、堂前取締役会長、清水代表取締役社長、高橋取締役上席執行役員の3人と、社外取締役5人、社内監査役4人という体制になる。

24年8月期の営業収益は国内外の出店に伴う店舗数の増加に加え、国内の売上高が伸張し、6616億円(前期比13.8%増)となった。堂前社長体制となった2021年9月から成長スピードを速め、3年間で2000億円以上を積み増したことになる。

粗利益率は国内の価格改定による効果と、値下げのコントロールにより4.1ポイント改善し、50.8%となった。営業利益は561億円(同69.4%増)で、従来の最高益だった18年2月期の452億円を100億円以上上回った。営業利益率は8.5%で前期から2.8ポイント改善。ピーク時の12%には及ばないものの、回復傾向にある。

販管費は人的資本への投資を強化したことで、2802億円(同17.6%増)となり、販管費率は前期から1.4ポイント増加し42.4%となった。店舗に加えて本社人員が増加した一方で、運搬・配送費は国内で納品回数の適正化や積載率の向上など物流の効率化が進んだ。借地借家料は国内で定賃料の店舗が増える中、売上高が伸長したことで賃料比率が若干低減した。

国内事業は営業収益が3889億円(同13.4%増)と4000億円に迫る勢いとなった。ECを含む全店売上高は前期比16.0%増で、客数が同6.2%増、客単価が同9.3%となった。既存店は客数が同1.2%減だったものの、客単価が4.7%増となり、売上高が同6.8%増と計画を上回った。生活雑貨が同11.8%増とけん引し、衣服雑貨は同0.5%増、食品は同5.3%増だった。上期は昨年の値上げの影響で伸び悩んだものの、下期に入り、新商品投入やマーケティング効果で、プラスに転換した。国内スキンケアの販売拡大や、衣服雑貨の刷新なども寄与した。営業利益は397億円(61.8%増)と高伸長し、営業利益率も前期に比べ 3ポイント改善し10.2%まで回復。増収増益となった。課題に掲げていた坪当たり売上効率も下期に入り改善傾向にある。なお、10月2日に開示した9月の月次実績でも既存店ベースで前年同月比11.3%増と好スタートを切ったという。

グローバルで1305店舗に

海外(現地通貨ベース)は、東アジア事業(中国大陸、台湾、香港、韓国)は営業収益が約2000億円となり、既存店売上高は前年割れとなったが、店舗数が増加して増収。営業総利益率が改善し増益となった。円安効果で押し上げられた。中国大陸は増収増益を確保。東南アジア・オセアニア事業(タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、オーストラリアなど)は約400億円となり、既存店売上高は前年並みながらも、出店拡大により増収。出店経費が先行していることで減益となった。ただし、円ベースでは円安効果により増益となっている。欧米事業については、北米は売上高が伸長し、増収増益。欧州は採算店舗閉鎖に伴う店舗数減により減収微増益、円ベースでは増収増益となった。海外事業は総じて円安進行により、連結取組時の押し上げ効果があったほか、特に欧米と東南アジアにおいては、日本から海外への商品供給時における原価低減効果により、営業総利益率が押し上がり、増益幅が拡大した。

消費のスローダウンが言われる中国大陸では、既存店売上高前年比は3.6%減と計画を下回った。オンライン販売は前年実績を上回ったが、店舗の売上高が低迷した。ただし、円換算では通期の営業収益が同11.5%増の1182億円だった。期末店舗数は前期から37店舗増えて398店舗。なお9月の既存店売上高の前年比は、オンライン販売の押し上げにより、同3.9%増で、23年12月以来、9カ月ぶりに前年実績を上回った。

店舗数は117店舗増加し、国内・海外合わせて1305 店舗となった。国内は郊外を中心に76 店舗を出店し、15店舗を退店。期末店舗数は61店舗増えて623 店舗になった。海外は73店舗を出店し、17店舗を退店。期末店舗数は682店舗となった。中国など東アジアで 54店舗を出店したほか、東南アジアにも 19 店舗を出店して店舗網を拡大。一方、欧米では不採算店舗の閉鎖を進めており、7店舗退店して期末店舗数は50店舗となった。

今期も国内外で出店攻勢

25年8月期の業績予想は、営業収益は国内外の出店を軸とした伸張により7340億円(同11.2%増)を見込む。国内は4333億円(同11.4%増)、海外は3007億円(10.3%増)と、海外の売上高が3000億円を突破する計画を立てる。既存店売上高前年比は全てのセグメントでプラス成長を見込む。国内はスキンケアの拡販と、衣服の立て直しを進め、既存店売上高は10.6%増、中国大陸はオンライン販売の伸長を見込み10.1%増で計画する。

営業利益は、為替の影響や生産開発体制の強化に伴う先行経費などにより550億円(同2.0%減)と微減益を見込む。為替影響を除けば実質的には増益基調だ。国内が460億円(同15.9%増)、海外が445億円(同2.3%減)と国内が海外を上回る見通し。設備投資は店舗投資及びソフトウェア投資等を中心に 439億円を計画する。

エリア別では、東アジアは増収増益、東南アジア・オセアニアは3割増収も減益、欧米は減収減益を見込む。中国大陸は店舗のスクラップ&ビルドを推進することで、店舗数の純増ペースは抑制するものの、既存店の売上高をしっかりキープすることで増収増益を見込む。

米国は2020年にチャプター11(連邦破産法第11条)の適用を申請し、再建に取り組んできた。現在は店舗を東海岸中心に営業し、既存店売上高も前年を超えるなど、状況は堅調だ。次の一手として、ニューヨークに旗艦店を開業すべく、物件を探しているところだ。

生産・開発体制を戦略的に強化する。カンボジア、インドネシア、インドの3カ国に新たに現地法人を立ち上げ、従来の3拠点から6拠点に拡大する。生産パートナーの工場から近い場所に生産管理拠点を設けることで、工場の実態をより把握することが可能とする。製造現場により入り込み、生産パートナーの都合に合わせた生産をすることで、製造工程での無駄を省き、最小原価の実現につなげる。今期は経費が先行する分、利益を圧迫する要因となるが、来期以降、粗利率の改善という形で原価低減効果を刈り取っていきたい考え。

店舗数は国内外で128 店舗増え、1433店舗を見込む。国内は生活圏を中心に出店を進め、64店舗増加の687店舗に。海外は中国大陸の他、東南アジアを中心に64店舗増加の746店舗を計画する。中国大陸はスクラップ&ビルドをさらに進め、26店舗の純増を見込む。

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