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ライトオン再建の高い壁 ワールドのノウハウとリソースは通用するか【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ジーンズカジュアル専門店最大手のライトオンが、ワールド系の投資会社の傘下に入った。売上高の減少に歯止めがかからず、6期連続の最終赤字に陥っていたわけだが、ワールドが主導する再建は可能なのだろうか。どこよりも詳しく解説する。

ワールドは日本政策銀行と共同出資するW&Dインベストメントデザインを通じてライトオンにTOB(株式公開買い付け)を実施して子会社化するが、ライトオンにとっては長年の業績凋落で資本が消耗して行き詰まった果ての選択(破綻との二択だった)であり、ディスカウント価格のTOBスキームもタイトロープで、再建も困難を極めると思われる。

TOBのスキームと成立への関門

W&DインベストメントデザインによるライトオンTOBのスキームを要約すると以下のようなものだ。

(1)創業家の資産管理会社である有限会社藤原興産と創業一族の保有する株式を合わせても発行済み株式の42.3%と過半に満たないが、藤原興産が有するライトオンに対する貸付金9億円のうち2億4999万9990円を放棄した残額6億5000万10円を一株当たり110円で藤原興産に第三者割当増資して貸付金を解消し、その上で創業家が所有する全株式を取得すれば発行済み株式の51.93%になる。

(2)2024年11月29日に開催する定時株主総会にて上記第三者割当増資議案を決議し、藤原興産が本第三者割当増資の払込みを完了(貸付金と相殺)した上で、速やかにTOBを開始する。

(3)買付価格が110円と10月7日の東証終値311円を大きく下回るディスカウント価格のため創業家以外の一般株主の応募は見込めない(必要としない)ことから、TOBの買付株数の下限を18,427,676株(51.93%)、上限を18,796.230株(52.96%)とし、応募総数が上限を超える場合は按分比例方式で買い付ける。買付総額は上限で20億6758万5300円になる。

(4)TOBが成立すればワールドの子会社であるワールドインベストメントネットワークと日本政策銀行が折半で買付資金を提供し、W&Dインベストメントデザインがライトオンを子会社化するが、東証スタンダードの上場維持基準(株主数400人以上、流通株式2000単位以上、流通株式比率25%以上、流通株式時価総額10億円以上)は割り込まないからライトオンの上場は維持される。

周到に練られたTOBスキームだが、一見すれば成立には2つの関門が予想される。1つはTOB 開示前日(10月7日)の東証終値の3分の1強という異例に低いディスカウント価格だ。TOBでは3〜5割のプレミアムがつけられるのが一般的だから(24年の上場企業の成立したTOBの平均プレミアムは46%、最高は188.7%)、マイナス64.6%というディスカウント価格では一般株主の応募は期待できない。本件の場合は「期待できない」ではなく「期待させない」で、応募が多すぎて比例配分になれば創業家の株式全部を買い取れなくなるため、一般株主の応募を抑制するディスカウント価格という性格が推察される。

10月11日の取引終了後に発表されたGFホールディングスによる出資するファンドを通じてのマックハウスに対するTOBも、11日の終値334円に対して買付価格は34円と90.4%のディスカウントで、買付株式の下限も親会社のチヨダが保有する9,389,880株(発行済み株式の60.73%)、上限も10,050,000株(同65.00%)と、一般株主の応募を想定しないスキームが共通している。

業績凋落の果てに6期連続の純損失に陥り、破綻の危機が迫った24年8月期は仕入れにも支障をきたして業績が底割れし、純損失が121億4200万円にも膨れ上がって純資産が3億1500万円(一株当たり8.49円)、自己資本比率が1.6%と超過債務寸前まで落ち込み、他に支援の引き受け手も現れず法的破綻か身売りかの二者択一に追い込まれていたから、110円というディスカウント価格もやむを得なかった。期末の一株あたり純資産から見れば110円はPBR13倍近く、専門機関によるデューデリジェンスでも株式価値は94〜125円と算定されていたから、その中央値に落ち着いたのは合理性がある。

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