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「10 アイヴァン」から純銀ならではの経年変化が楽しめる “FAT PLATING”が登場 デザイナーの中川浩孝が考える“長く使いたい”アイウエアとは

10 アイヴァン,FAT PLATING

“美しい道具”をコンセプトに2017年にスタートした「10 アイヴァン」。その原点ともいえるファーストコレクションの“STANDARD”シリーズに、今回純銀と24金を用いた“FAT PLATING”コレクションが加わった。「経年変化を楽しめる眼鏡を作りたい」という想いからスタートし、道具としての機能性と美しさを追求してたどり着いた、FAT PLATINGという手法。今作のクリエイションについて、デザイナーの中川浩孝に話を聞いた。

純銀の経年変化を
味わえる眼鏡を作りたい

10 アイヴァン,FAT PLATING

「10 アイヴァン」の“STANDARD”シリーズは、チタン製の繊細なリム線、真珠貝製のパッドやトルクスネジなど、オリジナルの上質なパーツの美しさが際立つシンプルなオールメタル。今回の新コレクションでは、そこに表面処理加工として“FAT PLATING”、つまり厚メッキを採用した。ゴールドとシルバーを展開するが、中でもシルバーは極めて限られた日本の工場でしか生産することができない、純銀の厚メッキが施されているのが特筆すべき点だ。

「純銀の経年変化を味わえる眼鏡を作りたいと思ったのが、このコレクションを作るきっかけでした。これまでシルバー925の眼鏡はあったんですが、シルバー1000の眼鏡は調べても見つからなかったんです」。

一般的にシルバー925は、純銀に銅やニッケルなどの化合物入れることで強度を確保している。だが、純銀となると柔らかく、そもそも固形物にすることすら難しいという。

「眼鏡としての強度を保つとなるとかなりの体積を必要とするため、眼鏡を道具として捉えるとベストな選択肢にはなり得ません。では、純銀の色合いや手触りと、道具としての機能性を両立するにはどうしたら良いのか。そこで辿り着いたのが厚メッキという手法でした」。

“美しい道具”として
理に適った厚メッキという手法

フレームのベースをチタンにすれば、その強度を生かすことができ繊細なラインが可能になる。また、軽量で柔軟性も高いため、掛け心地もいい。

「厚メッキなら、チタンの素材特性を活かしながら、同時に純銀特有の“乾いた白色”と呼ばれる美しい色合と質感が楽しめる。それは美しい道具として、ベストなアプローチだと考えたんです」。

精密なチタン加工とメッキによる表面処理加工は、日本の眼鏡製造技術のなかでもとくにレベルが高く、そこには日本でモノ作りをする意義も感じられた。国内屈指のメーカーをもってしても純銀メッキは初めての取組みであったため、開発には約3年を要したというが、熟練職人の知見と高度な技術により「10 アイヴァン」だけのために開発された“FAT PLATING”が実現した。

「一般的には、メッキを施すよりも100%その素材で作られたもののほうが、価値が高いとされていると思うんですね。ただ、『10 アイヴァン』が目指すのは、“用の美”であり、機能性と芸術性を備えた道具としての美しさです。その点で、このFAT PLATINGは理に適っていると、自分でもすごく合点がいきました」。

自分だけの風合いを
楽しめる贅沢

10 アイヴァン,FAT PLATING

今コレクションは、先にも触れたようにシルバーの経年変化が楽しめるのが魅力だ。「使っていくうちにキズが入ったり、硫化して黒ずんでいったりと、表情が変わっていきます。純銀は塩化しにくく、硫化による黒ずみはシルバー磨きで落とすことができるので、磨けばまた艶を出せるし、黒ずみをそのまま風合いとして残してもいい。そこも純銀ならではですね」。

また、今作ではシルバーの質感をそのまま生かした「SILVER-MIRROR」、職人がヤスリで微細な傷をつけてマットに仕上げた「SILVER-SHIRRING」、熟練職人による表面処理で使い込んだ風合いを表現した「SILVER-SMOKED」の3パターンを展開している。それはデニムにたとえるなら、生の状態から履き込んで自分なりの経年変化を楽しむこともできれば、ビンテージ加工のように最初から味のある風合いを楽しむこともできるということ。どう楽しむかは、受け手に委ねられている。こうした提案も、純銀だからこそかなうものだと言えるだろう。

変化するからこそ
長く使いたいものになる

そもそも、一般的に眼鏡において経年変化は“不良”と捉えられ、新品の状態が長く続くことが良しとされている。

「そうした価値観を変えたいと思ったんです。時を経て変わっていく眼鏡があってもいいんじゃないかって。僕自身、眼鏡は大好きですけど、経年変化しないという点においてだけは満足できていなかったんです」。

では、中川にとって経年変化の魅力とは。

「人は、変化しないものにはいずれ飽きがきてしまうと考えているんです。デニムやレザーは、風合いが変化していくからこそ、長く使いたいものになる。『10 アイヴァン』は、“永続性”をひとつのテーマにしていて、20年、30年と自分が使いたいと思えるものであることを、モノづくりの段階からイメージしています。そのためには、モノとしての耐久性はもちろん、気持ちの耐久性、つまり長く使いたいと思えるものであるかも大事で。今回のコレクションは、それを形にできたと思っています」。

美しいだけでなく、道具として機能的であるからこそ、掛ける人の生活に寄り添ってくれる。使い続けたくなるからこそ、日々風合いも増していく。ともに歳を重ねるのが楽しみになる、そんな1本となってくれるに違いない。

同モデルは11月30日に「アイヴァン7285 トウキョウ / オオサカ」で先行販売を行う。一般販売は12月下旬を予定している。

PHOTOS:MASAHI URA
INTERVIEW & TEXT:MIREI ITO
問い合わせ先
アイヴァン PR
03-6450-5300