ファッション

ファッションで地方創生、副資材卸の増見哲が淡路島でイベント

服飾副資材卸の増見哲(大阪市)が兵庫県淡路市で運営する複合施設「ei-to(エイト)」で、9月15日、第2回目の淡路島コレクションが開催され、島内外から約3000人が訪れた。

エイトは、2017年に廃校になった旧江井小学校をリノベーションした施設で昨年12月にオープン。同社の増見喜一朗社長の祖父であり、創業者の増見鉄男氏の母校だったことから淡路市の入札に参加して同社が買い取った。ファッションの力を活用した地方創生をめざしている。「ここをファッションの発信基地にしていきたい。淡路島西海岸は食と住の開発が進んでいるが、衣の分野でも淡路島を盛り上げていきたいというのが一番の狙い」と、増見社長は話す。

淡路島コレクションは昨年に続き、2回目。地元で活動をしている人たちや地元出身者とつながり、共にファッションのイベントに取り組むことで町を活性化しようと企画した。今回はエイトの常設店舗と工房、カフェのほかキッチンカーも含めて全30店舗が出店。ファッションショーのほか、キッズダンスのライブやアロハダンスなど子供からファッションに関心の高い高感度層まで楽しめるイベントとなった。

新たな取り組みの一つ「淡路こどもファッション学」は、地元の子供たちにおしゃれに親しんでもらうのが目的。年長クラスの園児から中学生までの36名が夏休み期間中にデザインや縫製を学べる講習会に参加し、自由な感性でデザインして製作した洋服を自ら着用してランウェイで披露した。淡路島では都市部よりも10年早く少子高齢化、過疎化が進んでいる。「淡路島の子どもたちにファッションに触れ合う機会を提供することで、いつかファッションの道に進む人が出てくることを願っている」と増見社長。講師を務めた同市のファッショデザイナー、清水かなよ氏も「いままで触ったことのないような生地やボタン、ファスナーに思う存分触れられるのが楽しかったという声が多かった。それが自由な発想へとつながったと思う」と振り返る。

上田安子服飾専門学校と神戸ファッション専門学校生によるファッションショーは、施設内の廊下をランウェイに見立てて行われた。メインイベントのアワコレには、兵庫県南あわじ市で活動するあまづつみ・まなみさんによる藍染めブランド「萌蘖」(ほうげつ)と、アップサイクルがテーマの「ii」(イイ)、淡路島出身のデザイナー、市吉泰晴さんのラグジュアリーブランド「タイセイ・イチヨシ」などが出品。ランウェイの両側にズラリ並んだ観客たちは、スマホで撮影したり、間近で洋服に見入ったり、モデルたちにも熱い視線を送っていた。

「萌蘖」は、あまづつみさんが生まれ育った淡路島の海の色を藍染を通して表現したコレクションを発表。素材には主に麻や綿を用い、日常着や作業着、街着など様々な場面で使える服を披露した。デビューコレクションを果たした「タイセイ・イチヨシ」は、淡路島をテーマに制作した作品がイタリアミラノのファッショングラデュエイト2023で高評価を得た。今回、その作品を含めた33体を披露。カルトをテーマに自分自身や布への熱狂を大切にしたコレクションを見せた。市吉さんは、マロニエファッションデザイン専門学校クリエイション学科オートクチュールデザインコースを卒業。淡路島に戻ってデザイン活動を続ける理由について、「今の時代、東京でなくても世界のどこででも製作できるし、有名になれる。自分が好きな自然が近くにある環境で製作したほうが快適だし、いいものができると思うから」(市吉さん)。“淡路島から世界へ”を掲げ、今後も「メイドイン淡路の魅力を発信していく第一人者になりたい」と話す。

廃校を利用した複合施設「エイト」は増見哲のエイト事業部が運営する。館内では、サスティナブルをテーマに、ギャラリーやショップ、シルクプリントファクトリー、ミシンや刺繍機などを備えた工房、カフェを展開する。同社が手掛けるオリジナルの割烹着ブランド「kapoc」も販売する。

昨年のオープン以降、島内外で話題を集結果、徐々に知名度が高まり、収益面よりも人材確保で成果が出てきている。「副資材メーカーだけだと入社希望募者が少なかったが、来年からは京都芸大や武蔵野美術大出身者も入ってくる。得意先や仕入れ先からも注目されるようになった。ここを拠点にアパレルの活動の幅を広げていきたい」と、増見社長は意欲を燃やしている。

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