「モンクレール(MONCLER)」は10月19日、中国・上海で“ジーニアス”の最新コレクションを発表した。現地の造船所をプレゼン会場に用い、国内外から8000人を招待。今回の“ジーニアス”に参画したA$AP ロッキーに代表されるよう、ファッションと音学、車など、異なるカルチャーを融合したイベントはさながら、ファッション業界による一夜限りのディズニーランドやユニバーサル・スタジオのようで、盛り上がりは夜遅くまで続いた。“ジーニアス”を通してダウンブルゾンやコートの可能性を拡張しつつ、ファッション業界と近いカルチャーとも融合しながら、最終的にはファン層を拡大する「モンクレール」の狙いが具現化・可視化できるイベントとなった。
今回のコラボレーターは、長らく協業する藤原ヒロシ率いる「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」のほか、「モンクレール」のアートディレクター務めるフランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)による「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」、「リック・オウエンス(RICK OWENS)」のほか、上述のA$AP ロッキー、ルーシーとルーク・メイヤー(Lucie & Luke Meier)夫妻による「ジル サンダー(JIL SANDER)」、また英「ヴォーグ(VOGUE)」編集長務めるエドワード・エニンフル(Edward Enninful)、俳優で映画プロデューサーのドナルド・クローバー(Donald Clover)、そして地元デジタルアーティストのルル・リー(Lulu Li)ら。加えて「メルセデス・ベンツ(MERCEDES-BENZ)」とのコラボにはNIGOが参画してトリプルコラボとなった。
「モンクレール」のレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は音楽や映画などとの協業について、「ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)やJAY−Zらとの協業を通して、他の業界と交わるのは面白いと思った。デザイナーとは違うアプローチ、たくさんのエネルギーやアイデアを得ることができる」と語った。
以下、主要なコレクションをダイジェストで紹介する。
A$AP ロッキー
A$AP ロッキーとのコラボレーションを発表する空間には、中央にカセットテープを再生するレトロなステレオを設置。音楽が流れる空間の中、円形のデジタルサイネージと、その周囲に立つモデルでコレクションを紹介した。赤や緑、青、白などの原色を基調にしたコレクションは、フェルトのような生地の外側だけにラミネート加工を施したような素材のダウンブルゾン。ボトムスは、ヒップハングのカーゴパンツか、ロングブーツと合わせたレギンスでコントラストをつける。
「ジル サンダー」
「ジル サンダー」とのコラボ・コレクションは、ブランドの2024-25年秋冬を思わせるジェントル(優しい)な色使いとシルエット、ボリューム感が特徴だ。基調はパッファーでボリュームたっぷり、オーバーサイズのシルエットを描くコートやブルゾン、ポンチョ。ステッチの数を減らし、まるで羽毛布団に包まれているかのような温もりや優しさを提供する。生地をループ状にしたり、起毛するファブリックを用いたりで表情を加えた。手作業のぬくもりを感じるメタルアクセサリーも含めて、「ジル サンダー」のコレクションに、ダウンでさらなるボリュームを加えたら?という発想に基づく。
「リック・オウエンス」
「リック・オウエンス」は、アイコニックなロングブーツの素材をレザーからダウンに変え、大きな襟とコクーンシルエットが特徴のショート丈ブルゾン、反対にトレーンを引くマキシコートなどを提案。バラクラバ風のフードを取り付けたリブニットを合わせて、ブーツやアウターのボリュームと、タイトなインナーでシルエットのコントラストを描く。
「パーム エンジェルス」
「パーム エンジェルス」のコレクション会場は、さながらレース状。ゴーカートに乗ったドライバーが、観客の傍らを駆け抜ける。運転手が身に纏うのは、レトロなレーシングスーツ。光沢素材で作ったレーシングスーツには、サイドに白いラインを仕込んでレトロなムードを醸し出した。
「フラグメント デザイン」
いつもはストリートなスタイルをバリエーション豊かに見せるが、今回はごくごくシンプルな、格子柄のステッチを加えたスタンドカラーのコート一着を静謐な空間で見せた。協業したのは、ロンドンを拠点に活動するリチャード・ウィルソン(Richard Wilson)。床に油のプールを作ることで反射面として、空間を歪めること没入感を表現したアーティストだ。今回は、油の代わりに黒色の水を用い、白い屋根と黒いコートを反射する空間を創出。白い巨大な円の中で、黒いコートが静かに浮いたり沈んだりする(実際は、空中で上下している)様子を見せた。
「メルセデス・ベンツ × NIGO」
NIGOは、ダウンのコンパートメントをあしらった「メルセデス・ベンツ」の“ゲレンデ”を制作した。同じ空間で発表した洋服は、この“ゲレンデ”と雪山をプリントしたスエットにショートパンツやマウンテンブーツを合わせたスタイル。アウターは、ネルシャツやスカジャン、プレッピーなカーディガン、そしてダウンのジャケットだ。さまざまなスタイルをミックスしながら、“ゲレンデ”に乗って、雪山にドライブに出かけるメンズ像を描いている。
エドワード・エニンフル
エドワードは、ディストピア化した未来でも逞しく生きられる、機能性の高いアウターを基軸とした。プレゼン会場は、酷暑の砂漠、反対に極寒の極地、そして、雨風の止まない都心。いずれも黒一色のコレクションは、フリルを施したマキシ丈のスカートと一体化したアノラックや、長いトレーンを引くクロップド丈のケープ、極太&極長のフリンジをあしらったストールなど、モード誌の編集長らしくドレスアップすることを諦めない人たちの、エクストリームなビジネスシーンにおける装いに欠かせないアイテムという。
コラボ・コレクションは、10月中旬を皮切りに、来年秋まで順次発売する。