「カルヴェン」創設者のマダム・カルヴェンことカルメン・デ・トマソが6月8日、105歳で死去した。トマソは1909年フランスで生まれ、45年に「カルヴェン」を創立した。長身向けのクチュール服が主流だった中、彼女は小柄な女性向けに服を作り、数少ない女性クチュリエとして活躍した。シンプルでクリーンなシルエットを得意とし、ブランドの特徴にもなったグリーンとホワイトのストライプをよく使った。
彼女はコレクションを世界中で発表し、エジプトやタイ、モロッコ、キューバ、ブラジルなど、数多くの国を飛び回った。それぞれの国から受けた刺激は服に反映され、マドラスチェックやアフリカンなパターン、アステカ王国からインスパイアされたモチーフなどを生み出した。また、ライセンスビジネスにも力を注ぐ一方、60年代から20以上の航空会社の制服をデザインした。
「風と共に去りぬ」がフランスで上映された後、登場人物からインスパイアされたコレクションを作り、映画館でコレクション発表をした。また、1954年にはパリ解放10周年を記念してブランドのフレグランス"マ グリフ"のサンプルをパラシュートに結び付けてパリ中に飛ばした。映画衣裳を手掛けただけでなく、ブライダルデザイナーとしてもよく知られており、ヴァレリー・ジスカールデスタン元フランス大統領の妻アン・アイモーン・ジスカールデスタンのウエディングドレスをデザインした。
66年に夫が死去した後、72年にスイス人ビジネスマンでアンティーク収集家のルネ・グロッグと再婚した。同年に「カルヴェン」の店舗を香港と東京にオープンした。また、78年にはフランスの芸術文化賞を受賞し、93年に引退。2009年にはレジオンドヌール勲章コマンドール賞を受賞した。