ニューバランスジャパンが運営する「ニューバランス(NEW BALANCE)」は9月末、大阪・ミナミの心斎橋筋商店街に、西日本最大規模となるオフィシャルストア「ニューバランス心斎橋」を開業した。地下1階から地上3階までの4層で、店舗面積は約975平方メートル。2023年12月に新コンセプト店として開業した吉祥寺店の倍以上の広さで、グローバル旗艦店である原宿店に次ぐ大きさだ。
心斎橋の新店は、同ブランドが“コミュニティ型ストア”と位置付ける形態を導入している。特徴的なのは、どのフロアにも売り場中央にコミュニケーションを促進するための座席スペース“コミュニティサークル”を配置している点だ。コミュニケーションや接客を重視し、スタッフと客や、客同士の交流が自然に生まれるように空間を設計しているという。例えば、1階の“コミュニティサークル”には、足のサイズや幅、高さ、左右差、土踏まずの高さなどのデータから足の特長を導き出す3Dスキャンマシンを設置。台の上に乗るとおよそ1分程度で計測が完了し、立体化された足のデータを見ながら、スタッフが一人一人の足と目的にあった靴を提案する。
「商品よりも人を中心に据えた店作り」
1階はランニングシューズと、7月に販売開始して好評な“大谷翔平シグネチャーコレクション”を中心に展開。2階は「ニューバランス」のシューズを美しく見せることをコンセプトにしたアパレルラインの“メットトゥエンティーフォー(MET24)”と、バスケットボールカテゴリーのアイテム、3階は“メイド イン USA”や“メイド イン UK”のシリーズ、地下1階は、日本独自で展開するゴルフカテゴリーで構成する。ゴルフアイテムを取り扱う直営店は心斎橋店だけで、売り場には試し履きができる人工芝も設置した。
取扱点数はシューズが約190SKU、アパレル約215SKU、アクセサリー約146SKUと、従来の店舗に比べて抑えている。そのシーズンに注力するストーリーやターゲットに焦点を絞りこんで厳選したアイテムを展開し、「商品よりも人を中心に据えた店作り」を行っている。前述した、コミュニケーション促進のために各フロアに配した座席スペース“コミュニティサークル”がそれを象徴している。
こうした店作りについて、「いいものを長く着用していくという考えが根底にある」と、マーケティング部PR&デジタル課の小澤真琴マネージャーは説明する。「この数年は自信のある商品だけを選んで店舗で提案しており、お客さまにいいものを選んでいただくための接客に力をいれている」という。
シューズだけでなく
アパレルも好調
そのような考えを実現するため、店舗スタッフも精鋭を配置。足に関する基礎知識とシューズフィッティングの技能を習得したシューフィッターや、ランニングアドバイザーの資格を持ち、社内の厳しい試験に合格したランニングスペシャリストが店頭スタッフとして心斎橋には多く在籍している。コミュニケーションを取りながら顧客のニーズを引き出し、専門知識を駆使して顧客にあった商品を見つけ出す。
“コミュニティ型ストア”では、同じ売り場でシューズとアパレルを展開しているため、アパレルの売れ行きも好調だという。ファッション性と機能性を兼ね備え、仕事着としても着用できるアパレルアイテムがそろう“メットトゥエンティーフォー”では、体の動きに合わせて伸縮するオリジナルのカルゼジャージ素材を採用したセットアップなどを展開。「パンツはスニーカーがちょうどよく見えるような丈感にし、シルエットは細めと太めをそろえる。顧客の年齢層は幅広く、気に入っていただくとシルエット違いで何種類か購入される方も多い」。
オープン当日の取材で、最もにぎわっていたのが3階の“メイド イン USA”のフロアだった。モノ作りにこだわった高級ラインを展開するだけに、重厚感のあるインテリアを採用し、ゆったりした空間で接客対応する。「“メイド イン USA”の商品はもともと人気が高く、ファンは非常に多い。心斎橋店限定商品もそろえたので、このフロアをめがけて多くのお客さまが来店している。外国人のお客さまも多い」という。
3年連続で
過去最高売上高更新の見通し
“コミュニティ型ストア”は23年1月、ニューバランスの本拠地である米ボストンのニューベリーに1号店をオープン。新コンセプト導入により、同店の売上高は前年比2倍以上で推移しているという。“コミュニティ型ストア”は日本では23年9月の池袋店のオープンを皮切りに吉祥寺、広島、所沢に出店し、心斎橋店は5店舗目となる。10月14日には、ジャパネットグループが創業地の長崎で開業した複合施設「長崎スタジアムシティ」内にもオープンした。“コミュニティ型ストア”のフォーマットは、新たなスタンダードとして今後オープンする新店には導入していく予定という。
ニューバランスジャパンの業績は絶好調だ。22年に過去最高売上高を記録し、23年も記録を更新、24年も2ケタ成長で過去最高売り上げ更新を見込む。出店計画では年内にもう1店舗、コミュニティ型店舗のオープンが予定されている。