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連載 エディターズレター:IN FASHION 第51回

“40%でもやっちゃおう”が面白い

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“40%でもやっちゃおう”が面白い
「台北ファッションウィーク」の取材で、台湾に行きました。アジアのファッション・ウイークに注目している理由はいろいろありますが、一番は東京のファッション・ウイークと連携したら絶対に面白くなると確信しているから。その可能性を探るために、前回の4月に続き現地を再訪しました。前シーズンの印象は、地域活性化のイベントとしては盛況な一方で、ビジネスの場としてはまだまだといったところ。海外からバイヤーやメディアは招聘しているものの、時期的な問題やクオリティー面などで商談成立までのハードルは高く、十分な効果を得ているとは言い難い状況でした。ただ、今回の2025年春夏シーズンでは新たな発見があったのです。

意外だった軽やかさ

最も印象的だったのは、台湾は意外と「勢いでやっちゃおう」文化だったこと。現地在住の日本人ライターによると、モノづくりでもビジネスでも「4割程度の完成度」でまずはリリースし、作り手と受け取り手のみんなで残り6割を完成させようという特徴があるそうです。これはアプリケーションの開発が得意な台湾らしさで、スタート時は驚くほど不便でも、大勢の意見や手が加わることで最適化していくのだとか。何だか楽しそうです。この軽やかさは18年に始動した「台北ファッションウィーク」でも同じで、トライ&エラーを繰り返しながら少しずつ前進してきたのだと感じました。

今シーズンは、現地若者の間で流行しているアートIPのアーティストや、ミュージシャンを多数巻き込んでの派手なショー演出、そしてセレブリティーゲストの招待で若年層への認知拡大を図りました。ショーは世界のスタンダードに比べるとやや演出過多ではあるものの、前回感じたようなオールドファッション感は薄れ、正々堂々と服で勝負する気概を感じました。これも、アプリのような細かいアップデートなのでしょうか。そして、地元を盛り上げるという点ではそれなりの成果は出ていたように思います。

エッジ系若者も集う場に

アンダーグラウンドのカルチャーを感じさせる「ジェン リー(JENN LEE)」「チャウ デ オム」の会場には「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ(CHARLES JEFFREY LOVERBOY)」を着た若者たちが集い、「リック・オウエンス(RICK OWENS)」会場のような世紀末メイクの個性派もいて、エネルギー満ち満ち状態でした。ファッション都市の一つとして恵まれた環境の東京に対し、台北のオシャレ好きな若者からはファッションへの渇望を感じます。そのハングリーさが新たなコミュニティーを育み、古い価値観をひっくり返すカルチャーを生み出す原動力になります。「台北ファッションウィーク」がその場所として機能すれば、若い層のファッション感度はどんどん磨かれていきそうです。

若者の興味関心を集めるだけが目的ではありません。台湾に限らず、ファッション・ウイーク開催の目的は、生産者とデザイナー、そして消費者を結びつけること。台湾は機能性素材の開発に優れており、スポーツウエアの生産が活発です。「台北ファッションウィーク」には世界に通用する生産力と地元デザイナーのクリエイティビティー、そして消費者を結び付けてファッション市場を活性化しようという狙いがあります。詳しくは改めてリポートしますが、国とファッションメディアが同じ目線でタッグを組み、変化を恐れない勢い、移民文化ならではの軽やかさ、外部の意見を受け入れる謙虚さ、若者の渇望感、自国の高い技術などの歯車が噛み合えば、アジアを代表するファッション・ウイークの一つとして飛躍するかもしれません。そして、やや落ち着いている東京のファッション・ウイークとタッグを組めば、互いに相乗効果を生み出せると思うのです。

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