アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。世界最大のスポーツカンパニーであるナイキ(NIKE)が2020年以降、“テックカンパニー”に生まれ変わろうとしているんじゃないかと、本明さんは当時からスニーカー市場の不満を交えつつ、口を酸っぱくして言ってきた。僕たちはナイキが好きだ。だけど今のナイキを見ていると、なぜだか悲しくなるんだ。本明さんの不満は、スニーカーヘッズたちの代弁でもある。そんなナイキにやっと一筋の光が差し込んだ──時は来たか!?(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月30日号からの抜粋です)
──2020年からナイキのCEOを務めていたジョン・ドナホー(John Donahoe)が10月13日付で退任し、後任にエリオット・ヒル(Elliott Hill)が就任するようです。
本明秀文(以下、本明):ドナホーがCEOに就任した20年はコロナで世界中がパンデミックに陥っていた。同時に外出自粛で世界的にECが急成長。10年代後半から「イージー(YEEZY)」や「オフ-ホワイト(OFF-WHITE)」が火付け役になり始まったスニーカーバブルの絶頂期でもあったこのころ、調子づいたナイキは、イーベイ出身のドナホー就任を機に、まずD2Cを強化しようとした。卸先の小売店を大胆に切り、確実に売れるようなハイプなスニーカーはできるだけ自分のところで売る、みたいな。僕がアトモスを売却した21年11月はまだ調子が良かった。だけど結局コロナが明けた反動で、ECの売り上げが落ちた。そしてインフレになった。それでもかろうじて調子が良かったナイキは、インフレに合わせて定価をドンッと極端に上げた。何よりこの4年間、新作がほぼ出ていない。あっても誰も覚えていない。それが最大の失策。とうとう売り上げを見込めるOG(過去に発売されたモデル)を連発しはじめて、それも飽きられてしまった。この1年半ぐらいはめちゃくちゃ業績が悪化している。
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