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セレクトショップ販売員、百貨店外商、ヘアサロンオーナー 一流たちに学ぶ“稼ぐ接客”の極意

「WWDJAPAN」は2024年度、月に1回の頻度で計12のセミナーを実施している。これまで「Z世代の消費行動」や、「売れるスタイリング術」などをテーマに開催し、10月はファッションやビューティ業界の最前線で働く「販売員」に焦点を当てた。十数年にわたり「販売員特集」を組んできた「WWDJAPAN」にとって、彼らは時代を映す鏡。今をときめく販売員たちは対面接客とオンライン接客をどう使い分けているのか。10月15日に開いたセミナーでは、セレクトショップ、百貨店、ヘアサロンから3人のプロフェッショナルをゲストに呼び、“稼ぐ接客”の極意を聞いた。

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3児の母&時短勤務にしてトップ販売員!?

セミナー第1幕の主題は、ブランドECサイトを通して、どう顧客との接点を広げるのか。登壇者は、接客コンテスト「スタッフオブザイヤー2023」でグランプリに輝いた「ユナイテッドアローズ」新宿店スタッフの仲希望さんと、DX接客サービス「スタッフスタート」の運営元であるバニッシュ・スタンダードの小野里寧晃最高経営責任者(CEO)だ。同コンテストで優勝するためには、対面接客だけでなく、オンライン接客の観点からも圧倒的な成績を収めなければならないが、仲さんは後者のスキルをバニッシュ・スタンダードが提供するDXサービス「スタッフスタート」を通して磨いてきたという。

仲さんは3児の母であり、時短勤務で店舗に立ってきた。「限られた時間の中で店に利益をもたらすには?」を考え、「スタッフスタート」のコンテンツ投稿機能を用いて大量のコーディネート案をブランドサイトにアップしている。仲さんのルーティンは、他の社員よりも早く出勤し、1日に最大10投稿できるよう、ひたすらコーディネートの写真を撮影すること。店舗がオープンしたら顧客対応や日々のタスクをこなしながら、合間を縫って投稿する。そのストイックぶりは「まるでアスリート社員」と小野里CEOも感嘆するほど。

また、「仲さんがすごいのは、あくまでもお客さまが必要とするアイテムを起点にコーディネートを考えるところ」と小野里CEOは紹介する。一般的な販売員は、自分に似合うアイテムでコーデを組みがちだが、仲さんは顧客データに基づいて投稿内容を決める。顧客のEC上における回遊動線をたどり、どの投稿を見て購入に至ったかを分析。考察結果をもとに、新たな投稿を制作し、日々PDCAを回していく。だからこそ、「顧客の『欲しい!」を誘発するコンテンツを作ることができている」のだとした。

外商員は“お客さまのプロ”

続くセミナー第2幕では、顧客ロイヤリティーの向上をテーマに、阪急阪神百貨店で外商員を務める後藤大祐さんが登場。顧客の懐に入り込む術と共に、同社の外商員史上最高の個人売り上げを叩き出すに至るまでを語った。
そもそも外商とは、1人のVIP顧客の要望を叶えるために、マンツーマンの接客を行う仕事。商品を紹介するだけでなく、百貨店の枠組みを超えたおもてなしとして、高級ホテルや海外での催事を企画することもある。

「外商は、接客のプロである以上にお客さまのプロ」。後藤さんは何よりも第一に、顧客との信頼獲得に励んできた。現在、外商員歴約9年になるが、駆け出しの頃は「見ず知らずの外商員に会いに店舗に足を運んでくれる人などいないため、ひたすら自宅訪問して顔を覚えてもらうようにしていた」と振り返る。そして、どれだけ夜遅い時間に連絡が届いたとしても迅速な返信を心がけ、顧客が深層心理で抱いている要望に寄り添う。例えば、コロナ禍で友人との交流が思うように取りづらくなっていた顧客には、友人とのコミュニケーションの場として話題の高級ホテルを手配し、さらにはホテルの担当者と連携してオリジナルの食事メニューを振る舞った。6歳の娘を持つ顧客から「とある大人気ブランドのハンカチがどうしても欲しい」という声が届けば、ECサイトでの発売日に何人もの自社スタッフを総動員して要望を叶えた。「商品以外でも顧客の“喜び”を模索すると、将来売り上げとして返ってくる」と後藤さん。外商の世界においては「何を買うか」よりも「誰から買うか」が大事であり、底なしのおもてなし精神こそが顧客の心をつかむための秘けつであると語った。

親子3代が顧客に 人気ヘアサロンの接客

ラストの第3幕ではビューティ市場にフォーカス。登壇するのは渋谷と新宿に店舗を構える人気のヘアサロン 「ヴァイス(VAICE)」で代表を務める浅野宏明さんだ。同サロンはハイトーンから白髪染めまで、幅広い世代のオーダーに対応することで評判を博しており、美容機器の売り上げでも全国トップクラスを誇っている。ファシリテーターを務めた中村慶二郎「WWDJAPAN 」編集部シニアエディターによれば、ヘアサロンは、顧客の滞在時間が少なくとも2〜3時間という「特殊な業態」であり、いかに負担や違和感を抱かせない接客に徹するかが肝になる。浅野さんは「だからこそ、僕は余計な商品の説明は絶対にしない」とと断言する。

一般のヘアサロンでは、仕上げにヘアミルクやヘアオイルを塗布したり、ヘアセットをしたりすることが多いが、「それは美容師のエゴではないか」と問いかける。「お客さまはその匂いが実は苦手かもしれないし、すぐに帰宅して就寝したいかもしれない」。そんな中で、サロン専売品や、ドライヤーやヘアアイロンなどの美容機器をどう売っているのか。「売ろうとする接客はせず、始めから終わりまでカウンセリングをする意識でいる」といい、例えば、「リファ(RIFA)」の新しいドライヤーであれば、折りたたみ式であることと海外の電圧にも対応していることをメリットとして挙げ、それを海外旅行好きの顧客に紹介する。「トリートメントの提案も、価格がネックになっているお客さまには『ドンキで買った方がいいよ』と提案することもあります」と笑う。

こうして地道に積み上げた安心感は、顧客層の中心が30〜40代女性である「ヴァイス」の間口を広げている。浅野さんはインスタグラムに、子どもやお年寄りを接客する様子を投稿しているが、「お客さまが自然に連れてきてくれるようになっただけ」と話す。自身が信頼する美容師に、子どもや親のヘアスタイリングも任せたいと思う人が多いようで、今や親子3代を同時に施術することも少なくないという。「あくまでも目の前のお客さまが何を1番求めているかを考えて、それに合わせた提案をするのみ」。至極シンプルに思えるアドバイスには、浅野さんの経験値による裏付けがあり、さらなる金言を求めてセミナー視聴者からはさまざまな質問が寄せられた。

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