毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11 月4日号からの抜粋です)
林:売上高が20年で4倍。時価総額も2兆円を突破していて、圧倒的に勢いがある「アシックス(ASICS)」を特集しました。売上高の8割が海外のグローバル企業で、パリ五輪の日本選手団の赤いジャージの公式ウエアをはじめ、「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」や “ゲルカヤノ 14”など、街でもはやっていて話題性も高い。取り上げるべき企業だと考えました。
五十君:日米のIT企業を経て2018年に入社した富永満之社長COOが、「世界各国のシステムを統一し、グローバルで同じデータをもとに判断できるようにした」と話していましたが、各国に販売子会社も多くかなり大変だろうにサラッと語るので驚きました。米国にテニス留学した経験もあるそうで、そんな背景も快進撃の要因の1つかもしれません。会員サービス「ワンアシックス」なども含めて、デジタルに精通したリーダーがビジョンに向けて設計できるのは強いと感じました。
競技とファッションの2軸がうまく回っている
林:富永社長をはじめ、異業種から優秀な人材が加わって世界で勝つためのプロジェクトをグローバルで展開するようになってきていますね。かつて日本では部活動用シューズとしてなじみがありましたが、海外では圧倒的にランニングシューズメーカーとして認知されています。日本の売上高の中ではランニングは2割程度。24年1〜6月期では、「オニツカタイガー」がシェア1位になりました。
五十君:私はファッション分野のスポーツスタイルカテゴリーを取材しましたが、今本当に多くの若い人が街ではいています。19年のカテゴリー再編からたった5年。日常着にもスポーツウエアの機能を求める流れとY2Kトレンドをつかんだというのが大きいと思っていましたが、取材をすると、芽をいち早く見つけて、育て、刈り取るところまで綿密に計算していたのだと気付きました。
林:近年の成長は、主力のランニングに加えて「スポーツスタイル」カテゴリーと「オニツカタイガー」がけん引していますね。でもスポーツメーカーとしては、まだ世界で10位くらい。ランニングシューズで強みを磨くのはもちろんですが、次の芽はどこにあるのか。Y2Kも含めてトレンドが去った時に、取り残されないようにするのが課題だと思います。“定番”として不動の人気を誇るほどの看板アイテムがあるかというと疑問。追い風が止まっても売れ続ける商品が生まれるとさらに盤石でしょう。