ファッション

日本の料理文化に魅せられ15年 「ブルガリ イル・リストランテ」を率いるルカ・ファンティンの料理哲学とは

ブルガリ(BVLGARI)」が運営する東京・銀座の「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン(以下、イル・リストランテ)」は、単なるイタリアンレストランとは一線を画し、日本の食材や調理技術を通して再解釈したイタリアンを提供している。ジュエラーとしてだけでなくホテルなどのホスピタリティー事業でも評価の高い「ブルガリ」によるレストランということもあり、美食家をはじめ、味だけではない体験を求める顧客が訪れる。

日本への深いリスペクトから生まれるイタリアン

「イル・リストランテ」を率いるルカ・ファンティンがエグゼクティブ・シェフに就任して今年、15年を迎えた。ファンティンは、イタリア・トレヴィーゾ生まれ。13歳で料理人を目指しイタリアやスペインの名店で研鑽を積んだだけでなく、日本料理の名店でも修行したことがある。スペイン・サンセバスチャンで開催される料理の学会に参加した際に、「龍吟」の山本征治オーナーシェフのプレゼンに刺激を受けて、自ら修行を申し込んだ。その後、彼はヨーロッパへ戻りシェフとして活躍するが、日本での体験が頭から離れなかったという。そして、ローマの一流店「ラ・ペルゴラ」でスーシェフ(副料理長)として活躍していたときに「ブルガリ」から声がかかり来日。日本の四季折々の食材を求めて全国の産地をチームで巡り、独自のスタイルを進化させてきた。1人のシェフが15年にわたりレストランを率いるのは稀なこと。ブランドからの信頼はもちろんのこと、ファンティンの日本の料理文化への情熱と食材へのリスペクトが反映された一皿を提供し続けているからだ。

美食家を飽きさせないトップシェフとの共演

「イル・リストランテ」は、名店が多い銀座の中でも、さまざまなコラボやイベントを通して美食家たちを飽きさせないレストランだ。今年は、ファンティンの就任15周年を記念したイベント「フォーハンズ」を開催。4月には、フランスから「ル・ムーリス・アラン・デュカス」のシェフであるアモリー・ブルール、6月にはイタリアから「ダ・ヴィットリオ」のシェフ、キッコ・チェレア、韓国から「モス」のシェフ、アン・ソンジェとのコラボしたコースを期間限定で提供した。それぞれのシェフの異なる背景やアプローチとファンティンのスタイルを組み合わせた、いつもとは違った料理が提供された。

ネットフリックスのリアリティショー「白と黒のスプーン」の審査員でお馴染みのソンジェをはじめ、世界的に有名なシェフと共演できるのもファンティンの“イタリアン”の枠を超えた探究心と料理の新たな可能性への追求から。「モス」とのコラボレーションメニューは、サンマなどの旬の日本の食材を中心に、イタリアと韓国の食材、調味料を用いて絶妙なバランスで仕上げられた。日本の食材を軸に、イタリアンと韓国料理、お互いを引き立てつつ異文化が融合し、今までに味わったことのない味覚の発見だった。このように、世界のトップシェフによる新たな美食体験ができるのも「イル・リストランテ」の魅力の一つだ。

料理哲学は“控え目な美しさ ”滋味深い味わいを探求

ファンティンの美食の定義は、“食材の本質を引き出すこと”。高価な食材を使うのではなく、シンプルな素材であってもその味わいを最大限に引き出して味覚の中に自然の風景を再現することだという。高級レストランの料理は、盛り付けや見た目の美しさも大切。だが、彼は、視覚的なの美しさに頼ることなく、滋味深い素材を用いた味わいにこだわっている。

麗しい見た目よりも、滋味深さを重要視する“控え目な美しさ”を料理哲学とするファンティンにとって食材探しは、情熱の一つ。チームで四季折々の食材を求めて日本全国を訪れる。魚介類や肉類、野菜などはもちろんのこと、サフランといったスパイスまで、北から南まで生産者を訪問し、ベストな食材を選んでいる。「イル・リストランテ」で人気メニューのウニのパスタは2009年から提供しているが、産地を変えるなどして変化しているという。今年は、岩手でウニの再生養殖などを行う作り手からのムラサキウニを使用。特別な一皿を届け続けられるように、品質の良さはもちろんのこと、海洋生態系の保全につながる活動をする生産者から積極的に食材を仕入れている。

ファンティンは、次世代のシェフを育てる活動にも情熱を注いでいる。「ブルガリ」のラグジュアリーな世界観を「イル・リストランテ」を通して表現し続けるために、料理の未来を形作ること。それが、彼自身が掲げる今後のビジョンだ。

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