グローバル刃物メーカーの貝印は11月8日、フランス国家最優秀職人章を獲得した日爪ノブキデザイナーらを審査員に招き、「カイ ハット&ヘッドピース コンペティション 2024(KAI HAT & HEAD-PIECE COMPETITION 2024)」の最優秀賞授賞式を開催した。最優秀賞には、河内美和子の「ナチュール(NATURE)」を、審査員特別賞には千頭龍馬の「コカゲ ハット(COKAGE HAT)」を選出した。
同コンテストは、“あなたにとっての帽子の原点(ORIGIN OF HAT)” がテーマ。4月から8月にかけてデザイン画を審査し、まず優秀賞15作品に絞った。さらにその中から、貝印の縫製ハサミを使い実際に帽子を制作させ、最優秀賞と審査員特別賞を選出した。審査は、“デザイン”“テーマ・コンセプト”“技術”“構造・表現力”“機能性”の5項目に基づき行った。
日爪デザイナーは、河内氏の作品を「デザイン画を超えてきたと感じた。緻密な設計がゆえ、作品に隙がなく、良い緊張感を生み出している」と評価した。河内氏は、受賞記念として、貝印と日爪デザイナーが共同開発した最高峰の縫製ハサミ「オー(Ō)」を受け取ったほか、パリでファッション・デザイン研修に参加する予定だ。
もう一度、帽子をかぶる文化を
同コンテストの応募数は前年比190%。海外からの応募は2割近くまで増加し、コンテストの認知拡大を数字で裏付けた。だが、日爪デザイナーは満足しない。目指すのは、世界で最も権威のある帽子コンテストだ。「次世代の帽子デザイナーが日本に集まれば、日本のファッション業界に追い風が吹く。そして、日本経済のベースアップにもつながる」と、帽子業界を超えた展望を描く。
帽子作りに関わる人は年々減少している。「業界は逆境にある」と語る中でも、日爪デザイナーの声が明るいのは、帽子作りの楽しさを知っているからだ。「帽子作りと服作りは似て非なるもの。服はある程度型が決まっているが、帽子は頭の上に載れば良い。クリエイションの自由度の高さは、ファッションアイテムの中でも随一だと思う。作品だけでなく、帽子作りに携わる人もバラエティー豊かだ。本コンテストも、建設やデザイン会社に勤める人からの応募があった」。
日常的に帽子を身に付ける人が減少していることも、誰よりも強く実感している。だが、「帽子という選択肢があることで、ファッションはもっと楽しくなると確信している。このコンテストが、帽子について考え、帽子を身に付けるきっかけになれば嬉しい」と前を向く。