「グッチ(GUCCI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などを擁するケリング(KERING)は11月18日、新たな要職人事を発表した。2025年1月2日付で、セドリック・シャルビ(Cedric Charbit)=バレンシアガ社長兼最高経営責任者(CEO)がサンローランCEOに就任。その後任には、ジャンフランコ・ジャンアンジェリ(Gianfranco Gianangeli)=サンローラン最高商務責任者(CCO)が就く。また、フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=サンローラン社長兼CEOは、23年から兼任しているケリングのブランド開発担当副CEO職に専念。グループ傘下各ブランドのCEOを統括する。
13年からサンローランの指揮を執ってきたベレッティーニ=ケリング副CEO は、エディ・スリマン(Hedi Slimane)と共に仕事をした後、16年にアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)をクリエイティブ・ディレクターに任命。関係者によると、彼女は在任中にビジネス規模をおよそ6倍に成長させたという。今後については「ケリングのブランド開発担当副CEOとしての役割に専念できることを楽しみにしている」とし、「グッチでの直近の人事異動(編集部注:ステファノ・カンティーノ=グッチ副CEOが25年1月1日付でCEOに昇格)やその他の重要な人事により、現在抱える課題に取り組み、将来の舞台を整えるためにふさわしい人材がそろった」と説明した。
新CEOの経歴と求められるもの
ファッションに対する強い直感とデザイナーとの親密な関係が高く評価されているシャルビ=サンローラン新CEOは、トゥールーズ・ビジネススクールを卒業後、2001年にフランスの百貨店プランタンでバイヤーとしてキャリアをスタート。小売業での要職を経て、エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)の副ゼネラルマネジャーに就任した。12年にサンローランに商品戦略ディレクターとして入社し、商品&マーケティング担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントまで昇格。16年11月にバレンシアガ社長兼CEOに就任し、19年7月にはケリング執行委員会の一員となった。
サンローランでは、特に中国においてラグジュアリー消費が落ち込み、インフレと高金利が世界的な消費の重荷になる中、セールスの勢いを再活性化させることに向き合う。24年度の売上高(既存店ベース)は減速しており、第1四半期は前年同期比6%減、第2四半期は同9%減、第3四半期は同12%減。ケリングは、シャルビ新CEOのミッションについて「彼の専門知識とリーダーシップを生かし、パリを象徴するメゾンをさらに発展させ、そのユニークなポジショニング、伝統、アイデンティティーを構築することだ」と述べた。
また、ベレッティーニ=ケリング副CEOはシャルビ新CEOについて、「サンローラン時代、セドリックは私の重要な協力者の一人であり、彼のリーダーシップと独自のスキルにいつも感心していた」とコメント。「バレンシアガで、彼は驚異的な成長を成し遂げただけでなく、困難を乗り越えてブランドの舵を取り、新たな勢いをもたらした。彼こそ、サンローランの次の章を切り開く完璧なリーダーだと確信している」と続けた。
一方、ジャンアンジェリ=バレンシアガ新CEOは、06年にボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)でキャリアをスタート。マーチャンダイジング・マネジャーや日本法人のバイス・プレジデントを経て、2011年にプラダ(PRADA)のアソシエイト・インターナショナル・ディレクターに就任した。13年から4年間ジバンシィ(GIVENCHY)でグローバル・リテール・ディレクターを務めた後は、自身の家族が所有するイタリア・ペルージャのニットウエアメーカーでビジネスの再構築に取り組んだ。その後、20年にメゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)のCEOに就任。23年9月にサンローランに入社した。
08年からボッテガ・ヴェネタでマーチャンダイジング・ディレクターを務め、当時からジャンアンジェリ新CEOを知るベレッティーニ=ケリング副CEOは、「マーチャンダイジングチームの一員だった彼の才能をすぐに認識した。数年間一緒に働き、その後も絶えず連絡を取り合っていた」とコメント。「常にこの業界で最も優秀なプロフェッショナルの一人だと考えてきた彼が昨年、サンローランに加わったとき、ブランドだけでなくグループにとっても大きなプラスになったと感じた。そんな彼は、バレンシアガにおけるセドリックの完璧な後継者だ」と続けた。