ファッション

ベルリン・アート・ウィークで見たアートとファッションの交錯 国内外の気鋭ブランドが集結

ベルリンのアートシーンはファッションシーンと密接な関係にある。夏と冬の年2回開催されているファッションウィークは、ドイツ拠点の新進気鋭デザイナーを育成することを主な目的としているが、アートウィークはドイツ国内だけに限らず、インターナショナルブランドがアートと融合したインスタレーションや期間限定のポップアップ、ローンチイベントなど幅広く開催される。

そんな「ベルリン・アート・ウィーク」が今年の秋に開催され、100以上のギャラリーやミュージアムが参加し、300以上のエキシビジョンやイベントが行われ、13万人以上の来場者を記録した。

アンドレアス・ムルクディスのプロジェクトで日本のブランド「シハラ」が抜擢

ベルリンのコンセプトショップ「アンドレアス ムルクディス(ANDREAS MURKUDIS)」では、毎年アートウィークに合わせて、新規で取り扱うブランドのローンチを兼ねたグループエキシビジョンを開催している。今年は、2024年春夏コレクションよりルイーズ・トロッター(Louise Trotter)がデザイナーに就任した「カルヴェン(CARVEN)」や日本のジュエリーブランド「シハラ(SHIHARA)」のローンチ、コペンハーゲン発のデザインマガジン「アークジャーナル (ARK JOURNAL)」、ベルリン拠点のドイツ人アーティスト、クラウディア・ヴィーザー(Claudia Wieser)と家具ブランド「e15」とのコラボレーションによるテーブルコレクションの展示、1959年のニューヨークの若者を描いたブルース・デビッドソン(Bruce Davidson)の「ブルックリン・ギャング」に焦点を当てた写真展などが店舗を含めた3つのスペースにて開催された。

同ショップは、創設者で全てのバイイングを手掛けるアンドレアス・ムルクディスの独自の審美眼によって厳選されたブランドやプロダクトで構築されており、業界からのファンも多い。特に、近年は、日本のブランドやプロダクトに力を入れており、アートウィーク初日のローンチイベントでインスタレーションやコラボレーションプロジェクトを発表している。今年は「シハラ」が抜擢され、デザイナーの石原勇太が店頭に立ち、オリジナル什器やガラスケースに陳列されたミニマルなゴールドジュエリーや「パヒューマーH(Perfumer H)」設立者で調香師のリン・ハリスとのコラボレーションパフュームなどが披露された。

今月には、浅川喜一朗が手掛ける「シュタイン(SSSTEIN)」の取扱いもスタートした「アンドレアス ムルクディス」では、今後も他では見られない希少な日本ブランドが増えていくことだろう。

世界のギャラリーが一堂に集結したアートフェアで見せるファッション

「毎年テンペルホーフ空港跡地の格納庫を会場に開催されるのが「ポジションズ・ベルリン・アートフェア(POSITIONS Berlin Art Fair)」だ。世界24カ国から111のギャラリーが出展し、今年は特に韓国のアートシーンに焦点を当てたフェアということもあり、アジア人作家の作品が目立った。1万2000平方メートル、16メートルの天井高という敷地面積を誇り、飛行場を見渡すことができる開放的かつ非日常的な会場に設置されたオープンブースと作品点数の多さに圧倒される。

同フェアは、国際的なコンテンポラリーアートギャラリーのプラットフォームとして認知されているが、その一環として同会場内で開催されたのが「ファッション・ポジションズ(FASHION POSITIONS)」だ。第6回目となる今年は、「ファッションとアートのダイナミックな交差点に光を当てる」をコンセプトに、ベルリン拠点のファッションデザイナー20人が参加し、ギャラリー同様に各ブランドのオープンブースが設置され、作品が展示された。

台湾をルーツに持つ「#ダムール」は、生産過程で出る端材や余ったパーツを靴にコラージュしたアップサイクル作品を発表。デザイナーのダマー・チェンは「ハイファッションとアートをシームレスに融合させ、イギリスの伝統的な食事スタイル“ハイティー“の心遣いや創造性からインスピレーションを得た作品です」と述べている。

ベルリンのミッテ区に路面店を構える「クルーバ (CRUBA)」は、アカデミー賞授賞式のレッドカーペットでドナータ・ヴェンダースが着用し、話題となったVHSテープのアップサイクルドレスを展示。来場者の多くが足を止め、じっくり観察する姿や写真撮影する姿も見られた。また、会場内には期間限定のポップアップストアが開設されており、出展ブランドのコレクションの一部や現行の商品を購入することが可能となっていた。

「ファッション・ポジションズ(FASHION POSITIONS)」は、独立系デザイナーの芸術的なアプローチによって認知度を高めることを目的としており、デザイナーを支援し、チャンスの場を与えることによって、ベルリンのファッションシーンがクリエイティブで革新的であることを世界に伝えたいと考えている。

公式発表によると、同フェア全体の来場者は3万人を記録した。ギャラリストやプレスといった業界関係者だけに向けたフェアではなく、一般のアートコレクターが作品を購入するための場でもある。日本のギャラリーやアーティストも多数出展していたが、価格設定も良心的なこともあり、売れ行きも好調だったようだ。「ファッション・ポジションズ(FASHION POSITIONS)」に出展された作品もアートのひとつとしてコレクターの目に止まり、ブランドやデザイナーの背景を知ることによって、より多くの人に広がっていくきっかけになることが理想の形ではないだろうか。

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