松坂屋名古屋店は19日、改装した本館4階のファッションフロアをあす20日の開店に先駆けて関係者に公開した。同店は今年秋から来年秋にかけて売り場面積の3割にあたる約2万7000平方メートルを順次リニューアルする予定で、その第1弾となる。最大の面積を占めていた婦人服売り場を6割減らした上で、グレードの高いアパレル、バッグ、ジュエリー、フレングランス、雑貨、アートなどの複合フロアに再構成した。
アパレル、ジュエリー、アート
本館4階のフロアの中央には松坂屋が企画・運営するテーマゾーン「セントラルステージ」(231平方メートル)を置いた。「マディソンブルー」「ハルノブムラタ」「CFCL」などのアパレル、「ヒロタカ」「ヒーミー」などのジュエリーを集積する。また東京・表参道のスパイラルアートギャラリーが運営するギャラリーが常設され、約1カ月ごとにテーマ展を開く。
ショップインショップは32店舗。そのうち14店舗が新規導入で、アパレルでは「コラム」「コルコバード」「シクラス」が東海地区初出店となる。バッグではイタリアの「ボナベンチュラ」、馬具作りの技術を生かした「シゼンドウ」などを誘致した。
同店の改装プロジェクトを担当する建築家・永山祐子氏によるフロアデザインは、導線を広く取り、フロア全体の見通しを良くすることで回遊性を高める。共有スペースの壁、柱、床には真鍮と銅を象徴的に用いる。松坂屋のシンボルであるカトレヤのつぼみを美濃和紙で作った装飾がいたるところで使われている。レストルームのひのきのベンチは、春日井市の工房が3D技術によって曲線的な造形に仕上げた。
若い女性客の買い回りを促す
改装にあたっては長年の課題解決が求められた。従来の婦人服フロアは、約20年にわたって顔ぶれがあまり変わっていなかった。識別顧客(外商、カード、アプリ)の消費行動を分析すると、近年増えている若い世代の顧客はラグジュアリーブランド、化粧品、食品などを買い回っているにもかかわらず、婦人服フロアの利用が少ない実情が明らかになった。
大丸松坂屋百貨店の江原忠志マネジャーは「中層階の婦人服で買い回りが分断されていた。この若い世代のお客さまを呼べれば、一気に活性化する」と話す。29日に増床オープンする本館3階の特選フロアとの買い回りを念頭に、目の肥えた女性客を回遊させたい考えだ。
ブランドは大胆に入れ替えた。取締役兼常務執行役員の加藤俊樹・営業本部長は「バッグから服まで全てをハイブランドでそろえるお客さまは少ない。顧客データを精緻に分析したうえで継続するもの、新しく入れるものを決めた。(消費の二極化が叫ばれているが、著しく値上がりした)ハイブランドよりも少し値頃で上質な商品を求めるニーズは確実に存在する」と説明する。
取引先からも期待も大きい。東海地区初出店の「コラム」(エストネーション)の担当者は「これまでのポップアップイベントの実績から商圏に良いお客さまがたくさんいることを実感している。(松坂屋名古屋店は)外商が強いことも魅力だ」と話す。
松坂屋名古屋店は本館、北館、南館の3館体制で売り場面積は約8万6000平方メートル。25年2月期の売上高は1346億円の見通しで、大丸松坂屋の中では不動の一番店(売上高が全国最大)である。
19日の内覧会を訪れた親会社J.フロントリテイリングの小野圭一社長は「名古屋はグループの中でも最重要エリア。改装を進める松坂屋、隣接するパルコ、それに開発中のザ・ランドマーク名古屋栄(三菱地所などとの共同事業)で最大のシナジーを作り出していきたい」と述べた。