三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、2025〜30年度の6ヵ年の中期経営計画(中計)を発表した。25〜27年度と28〜30年度の2つのフェーズに分け、27年度に総額売上高1兆4000億円(23年度実績は1兆2246億円)・営業利益850億円(同543億円)、30年度に総額売上高1兆5000億〜1兆5500億円・営業利益1000億〜1100億円を目指す。成否を握るキーワードは「個客業の進化」だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月25日号からの抜粋です)
「世界中から集まったお客さまを識別化し、多様な価値の提案で何度も利用を促す」。11月13日にオンラインで開催された三越伊勢丹HDの決算説明会(2024年4〜9月期)で、新しい中計を発表した細谷敏幸社長はそう話した。
コロナ禍の21年4月に就任して以降、「マスから個へ」のビジネスモデルの転換を唱え続けた。不特定多数の大勢の客を館(店舗)に集めて売り場にお金を落としてもらうマスマーケティングの手法では、消費者の変化に対応できない。識別顧客(カード、アプリ、外商などのIDを持った顧客)になってもらい、一人一人の購買データや趣味趣向に合わせて深く長く付き合う。漠然とした顧客ではなく、識別できる“個客”こそが向き合う相手と定める。百貨店へのロイヤルティーが高い顧客は、年間購買額も高い。人口減が続く日本で百貨店が成長できるビジネスモデルへの転換が必要だと説く。
識別顧客の売り上げが7割
細谷社長の「マスから個へ」の改革は想定以上の結果を出している。
22〜24年度の中期3カ年計画では「百貨店の再生」をテーマに掲げ、24年度に過去最高の営業利益350億円、長期的には30年度に500億円達成を標榜した。ところが早くも23年度に543億円を達成し、7年前倒しで目標をクリアしてしまった。長らく2〜3%台だった営業利益率は10%に急浮上した。
コロナ収束後の富裕層と訪日客の旺盛な消費は競合他社も同じだが、三越伊勢丹HDの場合は特に識別顧客の増加と強化によって1人あたりの年間購買額が伸びていることが大きい。
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