自身の心が救われた体験を元にZINEを作った大智由実子は、自主出版本を扱うイベントを温もりのある「触れ合い」場と表現する。その価値は、人との関わりが制限されたコロナ禍に一層高まった。10年以上前からZINEを取り扱う「フロットサムブックス(flotsam books)」の小林孝行店主、「日本のZINEについて知ってることすべて」を出版したばるぼらへのインタビューから現在のZINEのあり方をひもとく。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月25日号からの抜粋です)
ZINE(ジン)とは
自主的な表現活動による出版物。一般的な書籍の商業流通にのっていないもの。写真集や文学、評論、詩歌、アートブックまで幅広く内包する。
大智由実子(MARGINAL PRESS)
超個人的メディアだからできる
震える感情の発露
洋書のディストリビューターとして活躍してきた大智由実子は、生きることの息苦しさを赤裸々に打ち明け、その痛みとの向き合い方を提案するためにZINE「EMO」を出版した。心の内的世界を見るテクノロジー「メンタルモデル」を開発した由佐美加子による講演内容を軸にしたZINEを通じて、大智は不確かな世界との付き合い方を示す。
WWD:「EMO」を出版した背景は?
大智由実子(以下、大智):コロナ禍になって自分の内的世界に興味を持ち始めたときに、由佐さんの本に出合った。そこで提唱されている「メンタルモデル」を探求したところ、心の痛みが愛情へと変わっていく体験をして、素晴らしいと感じた。友人にも由佐さんの講演のYouTubeをシェアしたかったが、数時間の動画を見ることが難しい人も多いので、より気軽に共有できるように文字起こしをしてZINEに仕立てた。心の問題を扱う本はほかにもあるが、心理学をベースにしたものは分厚く難解でしっくりこない。「EMO」では持ち運んだり、電車で読んだりと、いつでもどこでも気軽に見られるような利便性とデザイン性を意識した。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。