沖縄のリゾートホテルではスイートルームなど特別な客室にジェットバスがついていることは珍しくない。しかし、2024年7月、本島北部に開業した「ツインラインホテル ヤンバルオキナワ ジャパン アネックス棟」では、標準的な客室である「ヤンバルテラスルーム」全室のインナーバルコニーに〝大型ジェットバス″が備え付けられていることで大きな話題を呼んでいる。
その理由をカトープレジャーグループの齋藤茜マーケティングマネージャーは、「当ホテルのホテル棟は西海岸側に面していますが、アネックス棟は山側に面しているため、やんばるの大自然をゆったりと楽しんでいただきたいと考えていました。ですが、ただ森を眺めること以上に、ご滞在の満足度を高めるべく、全室のバルコニーにジェットバスを付帯することに至りました」と話す。
しかも、既存ホテルとの差別化を図るために、ラウンジのドリンクも客室ジェットバスで楽しめるよう配慮している。
「当ホテルではお客さまに“シームレス”で滞在を楽しんでいただきたいと考えており、こちらではラウンジの飲料を客室内にお楽しみいただけます」。ラウンジで提供しているフリーフローのドリンクはフリージングハイボール、チューハイなどが用意されており、ジェットバスに浸かりながらビールを楽しむこともできる。「ジェットバスを付帯することによって、客室内の体験が無限に広がります。たとえ雨天や台風などの荒天時でも、ジェットバスがあればリフレッシュしていただけますし、ホテルをお選びいただく上でも大きな付加価値になると考えています」。
県内で初めて、15年に全客室にジェットバスをつけたのが「星のテラス もとぶ山里」。やんばるの雄大な景色をみながらジェットバスにつかる至福体験から、年に2回以上のリピーターも多い。
最寄りのコンビニまで車で10分という、海と山に囲まれた本部町の高台に位置し、屋上からは満点の星空を堪能できる場所にある。「ジェットバスからの絶景に癒されるというお声を多くいただいていますね。ファミリーやカップルが多く、小さいお子さんがいらっしゃるとミニプールのようにお使いになります」(浅野雄一・星野テラス もとぶ山里 チーフマネージャー)。
ただ、アフターコロナでそんな客層にも変化があるという。「最近は女性が一人で滞在されるケースが増えています。都市部から離れて、自然を眺めてゆっくり休息したいという人が多く、今後は女性一人旅の宿泊プランも検討しています」。
ジェットスパに入りながら絶景を眺め、何もしないぜいたくを楽しむ。これこそ、まさに〝おこもりステイ″。お一人さまにぴったりなコンパクト仕様の客室「バリュールーム」にもジェットバスが付帯しているため、心身に癒しがほしいときに、一人でふらっと立ち寄れる。そんなカジュアルさもリピーターを獲得している理由なのだろう。
一方、全室スイート仕様でテラスジャグジーを備えているラグジュアリーホテル「ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 宜野座」の橋本和貴・支配人は「温泉の代わりとしてテラスジャグジーを設置しました」と話す。
「既存の3施設では温泉施設がありましたが、こちらではご用意がありません。そこでひらまつの顧客のために、温泉の代わりにテラスジャグジーをつけたのが設置の理由です」。
そして、ジェットバスをつけたことで、滞在するゲストに思いがけない〝非日常な体験″を提供できているという。「ご夫婦でいらっしゃったお客さまが、『ジェットバスにつかりながら広大な星空をゆっくりと楽しめた』と。しかも、『妻とこれほど至近距離で一緒に時を過ごす機会がないので、かけがえのない時間になった』とお話いただけたことがあり、非常に心に残りました。ジェットバスがあるから宿泊した、というお客さまはあまりいらっしゃいませんが、ジェットバスはこのような非日常で新鮮な体験をご提供できる機会になっていると考えています」。
このようにジェットバス付客室が増えたことで、最近はホテル選びの際も「ジェットバス付」の条件で検索できたり、「ジェットバス付のリゾートホテル特集」が情報サイトで企画されることも増えている。限られたゲストしか利用できないホテルの「クラブラウンジ」に比べ、全室ジェットバス付のホテルは背伸びしすぎない手の届くぜいたく。県内では今後も新たに開業するホテルが続くが、このような付帯施設の魅力は色褪せることがない。リピーター獲得にも寄与するはずだ。