世界で最も有名なラグジュアリーブランドの一つである、「シャネル(CHANEL)」。創業デザイナーのガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)は抜群の知名度を誇っているが、長年にわたって同ブランドを保有するフランスの大富豪、ヴェルタイマー(Wertheimer)家について知る人は少ないだろう。ここでは、表に出ることを好まず、伝統ある厩舎のオーナーとして競走馬の生産に情熱を注ぎ、華やかなファッションショーよりも競馬場で見かけることが多いという謎めいた一族と「シャネル」との関わりについてまとめた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月2日号からの抜粋です)
「シャネル」は1910年、シャネルがパリ・カンボン通りに帽子店「シャネル モード」をオープンしたことに端を発する。12年にフランスの高級リゾート地ドーヴィルに初のブティックを開き、13年には男性用肌着に使われるジャージー素材で作った画期的なスポーツウエアを発売して成功を収めた。勢いに乗り、18年にはカンボン通りにクチュールブティックをオープンし、21年に初の香水“シャネル N゜5”を発売。販路の拡大を考えていたシャネルに、パリの老舗百貨店ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)の共同創業者であるテオフィル・バデ(Theophile Bader)が、実業家のポール・ヴェルタイマー(Paul Wertheimer)とピエール・ヴェルタイマー(Pierre Wertheimer)兄弟を紹介した。ここから、「シャネル」とヴェルタイマー家の長年にわたる関係が始まる。
兄弟の父親であるエルネスト・ヴェルタイマー(Ernest Wertheimer)は19世紀後半、メイクアップブランド「ブルジョワ(BOURJOIS)」に投資して成功。このため、財力はもちろん、ビューティ製品の製造販売に関する豊富な知識を持つ2人は、シャネルのパートナーに適任だった。こうした後ろ盾を得て、24年にはフレグランスとビューティの製造販売を手掛けるソシエテ デ パルファン シャネル(SOCIETE DES PARFUMS CHANEL)を設立。同社の株式の70%を兄弟が、20%をバデが、そして残りの10%をシャネルが保有することとなった。しかし、シャネルはこの配分に不満を抱いていたようで、28年には持ち分を増やすべく法的な手続きを取ったといわれている。
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