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日本での存在感を高める「パンドラ」 “フル“ジュエリーブランドへの進化を担う2人が大切にする自己表現と包摂性

PROFILE: フランチェスコ・テルッツォ(左)&A.フィリッポ・フィカレリ「パンドラ」シニア・バイスプレジデント(SVP)兼クリエイティブ・ディレクター

フランチェスコ・テルッツォ(左)&A.フィリッポ・フィカレリ「パンドラ」シニア・バイスプレジデント(SVP)兼クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: 共にイタリア出身。2000年代初頭に出会い、04年に2人でメンズウエアブランド「ミー マイン」を設立。その後、主にアクセサリーを手掛けるファッションブランド向けのコンサルタントとしても活動。10年には、ミラノのコンサルティング会社GB ストゥディオの共同クリエイティブ・ディレクターに就任した。数年間にわたって「パンドラ」のコレクションをコンサルティングした後、17年にバイスプレジデント(VP)兼クリエイティブ・ディレクターに就任。23年にシニア・バイスプレジデント(SVP)兼クリエイティブ・ディレクターに昇進し、現在に至る

世界100カ国以上で販売されているデンマーク発のジュエリーブランド「パンドラ(PANDORA)」が、日本での存在感を高めている。日本上陸自体は2011年だが、今年に入ってからは出店を加速。渋谷センター街や名古屋栄、京都河原町の路面店をはじめ、関東圏と関西圏を中心に29店舗をオープンし、今後も全国での店舗網拡大を計画している。また10月24日には、グローバルアンバサダーに就任した韓国の5人組ガールズグループ、レッドベルベット(Red Velvet)を迎えたVIP限定のライブイベントを大阪で開催した。

そんな「パンドラ」は現在、自由にカスタムできるアイコニックなチャームブレスレットだけでなく、フルラインアップのジュエリーブランドとしての認知を高めるために取り組んでいる。その一翼を担うのが、17年に就任したフランチェスコ・テルッツォ(Francesco Terzo)&A.フィリッポ・フィカレリ(A. Filippo Ficarelli)=シニア・バイスプレジデント(SVP)兼クリエイティブ・ディレクターだ。20年以上デュオとして活動し、現在はコペンハーゲンとミラノを行き来する2人に、ブランドにもたらした変化やジュエリーに対する考えを聞いた。

表現するのは、あらゆる形の愛

WWD:クリエイティブ・ディレクターに就任してから約8年になるが、「パンドラ」のジュエリーとどのように向き合い、変化をもたらしてきたか?

A.フィリッポ・フィカレリ「パンドラ」SVP兼クリエイティブ・ディレクター(以下、フィカレリ):就任当時から、私たちのミッションは「パンドラ」を“フル“ジュエリーブランドへと変えること。象徴的なチャームブレスレットの背景にある“パーソナライズ“や”自己表現“というアイデアを幅広いジュエリーを通して表現することに取り組んでいる。また、ジュエリーは素晴らしい業界だが、伝統的な慣習も多く、“ロマンチックな愛“や”女性への贈り物“といった特定の文脈で捉えられがち。そこに、現代的で新しい視点を持ち込んだ。

WWD:そのリブランディングの一環として「LOVES」を新たなコンセプトに掲げ、これまで愛にまつわるさまざまなプロジェクトやキャンペーンを手掛けてきた。今年スタートしたグローバルキャンペーン「BE LOVE」もその一つだと思う。その背景には、どんな思いがあるのか?

フランチェスコ・テルッツォ「パンドラ」SVP兼クリエイティブ・ディレクター(以下、テルッツォ):「愛」という概念は、「パンドラ」にとって重要な要素。しかし、フィリッポが話したように恋愛的な文脈で語られることが今でも多く、「愛」にまつわるストーリーを私たちの視点で書き換えたかった。私たちが表現するのは、恋人という関係性だけでなく、さまざまな色で彩られた、あらゆる形の愛。そして、愛を行動で示すということ。そのコンセプトを伝えるのが、「BE LOVE」だ。ブランドにとって次のチャプターでもある「BE LOVE」は、単なるシーズンキャンペーンではなくムーブメント。さまざまな世代やコミュニティーの声に光を当て、皆を巻き込んでいくことでムーブメントを起こせればと考えている。

フィカレリ:愛には力がある。暗いことも多い時代だからこそ、ポジティブなメッセージが必要だ。「パンドラ」で仕事を始めた当初から刺激を受けているのは、世界的な規模を生かして多くの人にアプローチできるということ。文化もジェンダーも年齢も異なる人々に、インクルーシブなメッセージを届けていきたい。

WWD: 2人にとって「パンドラ」のジュエリーとは?

フィカレリ:エモーショナルで、一人一人の人生にとって深い意味のあるもの。単に身に着けるオブジェではなく、パーソナルな思い出やアイデンティティー、それぞれが伝えたいストーリーに強く結び付いていると思う。ルールにとらわれず自由に身に着けることで自信やパワー、喜びを感じてもらいたい。

テルッツォ:私たちのアイデンティティーの一部であるのはもちろん、タリスマン(お守り)のような役割もあるし、己の中の“ストーリーテラー“を解き放つもの。そして、「パンドラ」のジュエリーは特別なシーンのためだけでなく、毎日の生活を称えるものだ。

WWD:コレクションを制作する時には、何からインスピレーションを得ることが多い?

テルッツォ:私たちはいろんな国を訪れているけれど、そこで出会う人々が大きなインスピレーションになっている。今を生きるということは、この時代を生きる人々の声とつながり、互いに刺激し合うこと。さまざまなストーリーに耳を傾けることが、私たち自身のクリエイティブなエネルギーにつながっている。ただ、都会の中では何もかもがとてもスピーディーに進んでいくから、クリエイションの過程では静かな自然の中に過ごす時間も大切。そうすることで、自分たちが吸収したことを振り返ったり、整理したりすることができるからね。

チャームは、パワフルな言語

WWD:「パンドラ」にとってチャームは欠かせない要素。拡大するアイテムのラインアップの中で、チャームをどのように捉えているか?

フィカレリ:チャームは、人それぞれのストーリーを表現できるパワフルな言語であり、常に進化させていきたいと考えている。ジュエリーの歴史において、チャームの起源は古代エジプトまでさかのぼり、異なる文化の中でさまざまな形で取り入れられてきた。「パンドラ」のチャームは、私たちが生きる時代の文化を捉えられるものであり、タトゥーやスニーカーと近いと考えている。チャームは身に着ける人にとって大切な何かを表しているため、着用者との関連性がカギ。だから、一つの要素を選り好みしたり、押し付けたりするのではなく、さまざまな人が魅力を感じたり、共鳴したりするものを提案している。さらに好きな言葉やシンボルをエングレービング(刻印)できるサービスも始め、よりパーソナルな表現ができるようになった。

テルッツォ:最近では、「BE LOVE」と名付けたハートのチャームもローンチした。これは、「パンドラ」がチャームブレスレットを発売した2000年にデザインされたものを私たちなりに再解釈したもの。ふっくらと丸みがありながら、先が尖っているデザインが特徴で、刻印もできる。ハートの背景にはさまざまな意味合いがあるけれど、多くの人が身近に感じられるモチーフだと思う。

WWD:近年は、ラボグロウンダイヤモンドを用いたジュエリーを制作したり、自然の有機的な形状に着想を得た“エッセンス(ESSENCE)“コレクションをローンチしたりと、新しい提案も多く見られる。これからの目標は?

フィカレリ:今後も、「BE LOVE」というメッセージをフルラインアップのコレクションを通して広げていくことに取り組んでいく。そして将来に向けては、文化と深く結び付く“カルチュラル・プレーヤー“としてブランドを確立したい。

テルッツォ:具体的には、文化的かつクリエイティブなプラットフォームとして、アーティストやミュージシャンとコラボレーションしていく。重要なのは、表面的な知名度ではなく、その人が伝えたいメッセージやストーリーを持っているかということ。さまざまな才能に「パンドラ」のプロジェクトの門戸を開き、アイデアを共有することで、多様なクリエイティビティーがつながり合う世界を築きたい。

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