東急百貨店は渋谷ヒカリエの「シンクス」と渋谷スクランブルスクエアの「+Q ビューティー(以下、プラスク)」、渋谷109の「ドレステーブル バイ シンクス ビューティ パレット(以下、ドレステーブル)」と渋谷に3つのビューティフロアを構え、合計約3690㎡の売り場面積と約100のブランドからなる幅広い品ぞろえを強みとする。未来顧客から成熟した上顧客までの囲い込みに成功し、渋谷のビューティ市場をけん引する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月25日号付録「WWDBEAUTY」からの抜粋です)
中高生をはじめとする未来顧客が通うのは、「ドレステーブル」だ。カラーメイクを中心に10ブランドほど取り扱い、8〜10月の売上高は前年同期比80%増と好調だ。一部ポップアップスペースを設けており、「プラスク」で好調のブランドなどを取り上げ新客獲得につなげている。
20代を中心とした若年層の顧客層を持つ「プラスク」は3店舗で一番の売り上げを誇り、同10%増だった。2023年秋以降、「パルファム ジバンシイ(PARFUMS GIVENCHY)」や「ポーラ(POLA)」などを導入。「ランコム(LANCOME)」や「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」はリニューアルオープンし、エントリー世代を取り込むためのカウンター作りを進めている。蛭田記章・東急百貨店 ファッション・雑貨統括室 ビューティー・自主MD部 部長は、「19年の開業当時は5階(一部)と6階にビューティフロアを設けることに対し、出店ブランドから売り上げ確保が難しいのではという声もあったが、当社が上層階で化粧品を取り扱うのは東横店に続き2回目。『プラスク』はメイクブランドのラインアップを強化し、主力ブランドを全て導入した」と話す。全体の8割弱のブランドは前年から大きく売り上げを伸ばしており、「若年層の顧客が多いため、ブランドがKOLを起用すると指名買いが増加する」。
「プラスク」は若年層中心の顧客層を持つため、大人層や男性の顧客がゆったりとショッピングしづらいという課題があった。また東急本店の外商顧客に対応するため、「シンクス」でカウンセリングやトリートメントルームの席数の増加、ローカウンターの増設など順次リニューアルを進めている。
3拠点はメーンターゲットと設計を差別化することで、渋谷のビューティ市場で大きな存在感を発揮している。「ドレステーブル」で未来顧客を育成し、「プラスク」で若年層のショッピング体験を支え、「シンクス」では成熟した上顧客に満足してもらえるようなゆったりした接客を提供する。蛭田部長は、「一社が一地域で、全年齢層の顧客を囲い込むことは珍しい。渋谷の3店舗が軌道に乗り始めたので、将来的にはほかの地域にも拡大していきたい」と話す。3店舗合計で、訪日客の売り上げ比率は20%を下回ることも特徴的だ。
同社はまた、渋谷起点のビューティトレンドを発信するプラットフォームとして「シブヤ ビューティー ジャム」を23年12月に始動した。ポップアップやイベント情報など、渋谷らしい感性を発揮した記事を手掛け、新たな感動や発見を創出。11月28日から12月8日まで、3拠点横断のリアルイベントを開催するなど、渋谷だからこそ生まれる空気感をベースにさまざまな企画を仕掛け、渋谷を“ビューティの聖地”にすることを目指す。
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