ファッション・フロンティア・プログラム(FASHION FRONTIER PROGRAM)は、2024年の受賞者を発表した。12月9〜14日の期間、東京・青山で2024年度のファイナリストおよび2023年度受賞者の作品を展示する。
ファッション・フロンティア・プログラム
2024年度の受賞者を発表
ファッション・フロンティア・プログラムは、社会的責任と創造性を併せ持つ衣服のデザインを具現化できるファッションデザイナーの発掘とサポートを目指すもの。2024年度は、グランプリに須田美咲「Forest Clothes : In the glow」、準グランプリに富山聖「KEMMUN」と村田充生「WE WANNA 農!!!」を選出した。
グランプリ受賞
須田美咲「Forest Clothes : In the glow」
須田は、“衣服を通して人と森の関係を考え直すきっかけを作る”をテーマとし、森の木漏れ日に着想を得て制作。管理された森の木材から作ったテキスタイルに、光を受けて発色する“青焼き”の染色技法を用い、森の木漏れ日を当てて模様をあしらった。
準グランプリ受賞
富山聖「KEMMUN」
富山は、出身地の鹿児島県・奄美大島に伝わる妖怪“ケンムン”をモチーフに制作。幼少期から絵本や昔話で伝え聞いた“傍にいてくれる1人の存在”である“ケンムン”を、現代の衰退する奄美の文化や、サトウキビの新たな活用などと重ね合わせ、衣服と共に身にまとった。
準グランプリ
村田充生「WE WANNA 農!!!」
村田は、生前、農業に従事する祖父が口にした“百姓”をルーツとし、自らのファッションを“農”と表現。ファッションデザインは、衣服のデザインに留まらず、“人の在り方”であると考え、新しい“農”を目指した。
2024年度は、アジアとヨーロッパ、アフリカ、アメリカなど国内外の応募者から選出した17人のセミ・ファイナリストで開始。エデュケーションプログラムに参加後、中間審査で作品の構想を発表、8人のファイナリストを選出。ゲスト講師から技術的なアドバイスのもと制作を進め、12月3日に最終プレゼンテーション、厳正な審査の結果、受賞者を決定した。審査員は、ユナイテッドアローズ上級顧問の栗野宏文、ファッションジャーナリストの渡辺三津子らが務めた。
中里唯馬デザイナー
コメント
本プログラムの発起人、ファッションデザイナーの中里唯馬は、「一説には、80%の環境負荷はデザインのプロセスで決まってしまうと言われる。だからこそ、ファッションデザイナーとは責任重大な仕事なのである。このプログラムが目指すのは、ファッションデザインに新たな評価基準を作ること、そして新たな学びの場を作り、ファイナリストのクリエーションと共に社会に問いを発信していくことで未来を変えていこうという、アクティビズムでもあるのだ。2021年にスタートし、今年で4回目を迎えるファッション・フロンティア・プログラムは、会期を重ねるごとにレベルの向上を感じる。それは、物理的な品質としてのクオリティーの話だけではない。このプログラムとは何なのかという輪郭がよりはっきりし、参加者もそれらを認識し、より覚悟を持って挑んできてくれているからこそ、熱量の高まりを感じるのだ。参加者は、年齢や職業だけでなく、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカと様々な場所から参加してくれている。それぞれ文化や価値観も大きく異なるからこそ、みんなとても個性豊かで、毎週のオンラインでの交流はとても刺激的だった。そして、これらの多様な有り様をどのように評価していくべきなのか、審査は白熱したものになり、議論はより複雑になっていた。果たして審査員たちは、この時代に何をどのように評価していくのか、是非今年のファイナリストの作品から、読み解いてみてほしい。人間は、衣服がなければ生きていくことはできない生き物である。そして、その衣服が与える環境や社会に与える様々なインパクトは、決して小さい物ではない。これからの時代において、人間はどのような衣服を纏うべきだろうか。ファイナリストたちの問いかけと共に、みんなで未来を考えていくことがファッション・フロンティア・プログラムの願いである」とコメントしている。
■ファッション・フロンティア・プログラム エキシビション 2024
日程:12月9日〜12月14日
時間:13:00〜19:00(14日は10:00〜13:00)
休館日:12月12日
場所:ゴールドウイン東京本社 1階 イベントスペース
住所:東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル
入場料:無料