ビューティ

日本の“ジェネリックコスメ”は海外でも 安価な模倣品「デュープ」がビューティ業界に与える影響

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ビューティ業界で広まる「デュープ」トレンドが議論を呼んでいる。デュープとは人気商品を模倣した安価な代替品を意味し、日本でも“ジェネリックコスメ”として話題だが、TikTokで人気商品の安価版を探すトレンドやインフレなど経済的な要因が後押しとなり、デュープ現象が加速している。

米メイクアップブランドの「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」は、自社のベースメイクアイテム“ハリウッド フローレス フィルター”をコピー機で読み取ると「エラー!コピーできません」「レジェンドはコピー不可能」のメッセージが表示される動画をTikTokに投稿し、話題となった。一方で、TikTok上では「『シャーロット ティルブリー』は予算オーバーなので(プチプラの)『エルフ コスメティクス(E.L.F. COSMETICS)』を購入した」というコメントや、「『エムコービューティ(MCOBEAUTY)』の方が良い」という書き込みが見られる。後者のコメントには319件のいいねがつき、動画にも5万7000件以上のいいねと200件以上のコメントがつくなど、安価な類似品を支持する声が上がっている。

デュープブランドがカルト的人気を確立

さまざまなブランドの人気商品のデュープ版を提供するオーストラリア発のコスメティックブランド「エムコービューティ」は、創業から1年未満で米国に進出し、すでにカルト的な人気を確立している新興ブランドだ。同ブランドのメリディス・ロハス(Meridith Rojas)チーフ・マーケティング・オフィサーは、「驚くほど急速に成長している。オーストラリアで成功したデュープ戦略を、米国市場でも採用している。デュープがわれわれの全てではないが、ブランドの大きな部分を占めている。当社のアイデアや消費者からのコメントを製品化するスピードは業界最速レベルで、私たちはアクセシビリティが新たなイノベーションであると信じている」と話している。

デュープトレンドと闘う数少ないブランドには「シャーロット ティルブリー」の他に、「オラプレックス(OLAPLEX)」がある。同ブランドは昨年、自社の多くの特許が安価な処方で合法的に複製される可能性があることに反論するキャンペーンを開始した。デュープトレンドは今や多様なカテゴリーに広がり、ブランドと小売業者の双方が注視している。調査会社ユーロモニター(EUROMONITOR)のエミリー・フッド(Emilie Hood)アナリストは、デュープの増加の主な要因として次の2つを挙げる。「現在世界中の誰もが新型コロナやインフレ、地政学的問題の影響を受け、経済的な負担を強いられている。また、これは消費者が模倣品探しを楽しむゲーミフィケーション(ゲームの要素をゲーム以外の分野に応用すること)の一面もある」。さらに、「企業は新たなイノベーションやアイデアに投資しているため、模倣されているブランドにとっては厳しい状況といえるが、デュープ文化は“美容の民主化”の面から見れば決して悪ではない」と付け加え、実際にデュープブランドに対する偏見は薄れ、それがトレンドの台頭を後押ししていると分析する。

インフルエンサー・マーケティング・プラットフォームのクリエイターIQのデータによると、EMV(アーンド・メディア・バリュー)によってデュープの標的になっている上位のビューティブランドには、「シャーロット ティルブリー」「レア ビューティ(RARE BEAUTY)」「ソル デ ジャネイロ(SOL DE JANEIRO)」などが挙げられる。クリエイターIQのアレックス・ラウィッツ(Alex Rawitz)=リサーチ&インサイト部門ディレクターは、「デュープ文化は約8年前、あるユーチューバーがハイエンドな美容商品の安価な代替品を紹介し始めたことが発端。今ではより大衆的な概念となり、コンテンツクリエイターだけではなく、ブランド自体も市場で認知度を上げるために利用している」と指摘する。一方デュープの的になっているブランドは、それに乗じるのが賢明だともいう。「デュープ現象は高まりつつあり、ブランドとしてはソーシャルメディアで話題となることはマイナスではない。“模倣されている”ことはもはや問題ではなく、多くの消費者がその商品を欲しても気軽に購入できるわけではない、というブランディングにつながっている」。

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