ファンとの強いエンゲージメントを築く今のVTuberシーンはどのように生まれたのか。その歴史からムーブメントの背景、フロントランナー、強いファンダムまで、長く彼らを見続けているライターの草野虹に寄稿してもらった。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月9日号からの抜粋です)
日本のインターネットカルチャーのなかで、今もっとも勢いのある存在とは何か?そう問われるとアニメやマンガといった作品やコンテンツを挙げる方は多いだろう。そんななかで、一気に頭角を現してきたムーブメントがある、それがVTuber(バーチャルYouTuber)である。
今につながるVTuberムーブメントの始まりは、2016年12月1日にキズナアイがデビューしたところから始まる。その後現在まで8年にわたって、さまざまな社会状況やファン需要の変化を経て、現在では大きな支持層を得ることになった。
3Dもしくは2Dのアニメルックなキャラクタービジュアルを、モーションキャプチャー技術を使って自分自身の身体をひもづけて動かし、インターネットを通じてファンと直接コミュニケーションを取って楽しませてくれる。なおかつ「キャラクター」としてではなく「自分自身」として活動しようと試み、いわゆるタレントとして活躍できるほどの支持とファンを集め、熱気を生み出したのだった。
VTuber登場以前には、さまざまな企画を自身で用意・トライして注目を集めていたYouTuberや、ニコニコ動画内で配信をする生放送主といった、動画投稿やライブ配信を通して人気を集めていた方々がすでに存在していた。加えてアニメやマンガといったコンテンツがネットカルチャーのなかで人気を博していたことを考えれば、「アニメルックなビジュアルとなってライブ配信や動画投稿をする」という流れが生まれるのは、ある意味では必然だったのかもしれない。
初期にはキズナアイ、輝夜月(かぐやるな)といった面々が活躍していたが、ホロライブ・にじさんじというVTuberグループが18年から19年にかけて徐々に頭角を現し始めた。ホロライブは主に女性タレントを中心として男性ファンからの支持を集めるようになり、にじさんじは男性・女性合わせて100名以上のタレントを擁し、それぞれに活動している。ホロライブ内・にじさんじ内、それぞれの独自企画を展開することで、ファンの注目を集め、愛着を根付かせようと試みたのだ。
コロナ禍でのインドア生活が追い風に
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