コレクション会場の中央には、作りかけの小さな木造の小屋が2棟並ぶ。デザイナー2人の故郷であるLAの海をイメージした前回に対し、今シーズンは工業の中心地として発展したアメリカ北西部のワーカーから着想。ブラウンを中心とするダークトーンで、メンズのテーラードにひねりを加え新たな解釈を試みた。
ウエアは、ダブルポケットのスイングトップとボトムスといった作業員のユニフォームを、スーツの素材でキレイ目に仕立てている。多くはセットアップの上からジャンパーやニットをレイヤーしたルックで、スーツの上に作業用の制服を重ねたワーカーたちを彷彿とさせる。ネオンの光のような放射線をつなげて描いたチェック柄をのせて、インダストリアルなニュアンスをさらに強めた。
タイガーや目といったアイコニックなモチーフアイテムを得意とする「ケンゾー(KENZO)」が今季フォーカスしたのは、DIYの必須アイテムであるトンカチやネジ、ナットなどの工具だ。それらを組み合わせて胸元に刺繍したり、厚いソールのストラップシューズの甲に細かくちりばめたり、キャッチーに落とし込んでいる。モチーフを並べてノルディック柄に見立てたニットが印象的。工業的なコンセプトに対して、ボリューミーなファーコートやローゲージのケーブルニットといった、ナチュラルで温かな素材感が多いのも今季の特徴だ。
後半には、太陽が森の中に沈んでは登る、工場の周りの景色をパッチワークで作ったステンカラーコートやブルゾンが登場。自然と共存しながら工業を発展させてきたワーカーたちのクラフツマンシップに対する敬意がうかがえた。