バロックジャパンリミテッドの「ブラックバイマウジー(BLACK BY MOUSSY)」は、2025年プレスプリング(24年12月〜25年1月)をもってブランドを休止する。SNSなどでは、30代以上と思われる大人女性を中心に、休止を惜しむ声が広がった。
同ブランドは、関係者や顧客を招いた展示会をこのほど実施した。プレスプリングのみの展示会は実施してこなかったが、休止前の最後のコレクションということで披露した。会場では、これまでのコレクションビジュアルのアーカイブ動画を流した。
「ブラックバイマウジー」は同社の人気ブランド「マウジー(MOUSSY)」から派生し、大人女性をターゲットに2003年にスタート。発足当初は当初はスーツを軸にしたビジネススタイルの提案から始まり、その後はブランド休止やリブランドなど紆余曲折あって、ジーンズを主軸にスタイリングを提案する現在の形に落ち着いた。
かっこいい「マウジー」らしさと
大人女性の求める穿きやすさが同居
年々少しずつモデルを追加してきたジーンズは、それぞれコーヒーの豆の品種の名前がつけられている。シグネチャーはワイドストレートシルエットの“コナ”1万6500円”。全体的にタイトに絞られたストイックなシルエットの「マウジー」のジーンズと比較すると、特に腰回りをはじめ、大人の女性が加齢とともに気になってくる部分にゆとりを持たせるなど、細かな配慮がなされているのが特徴。ポリウレタン混のストレッチ生地は使わず綿100%で、コンフォート感を担保しながらもスタイルアップをかなえるパターン設計にこだわってきた。ビンテージを思わせる表面加工も本格的で、「マウジー」を卒業したファンに限らず支持を得てきた。
休止前最後の展示会では、ブランドの熱心なファンがジーンズを試着する来場者も多く見られた。「お客さまはもちろん、社内でもブランドのジーンズの愛用者は一定数いて、『今のうちにジーンズの予備をストックしておく』という方もちらほらいる」と行者陽子クリエイティブデザイナー。
では、「ブラックバイマウジー」を穿いてきた女性たちの代替案はどうなるのか。
ウィメンズリアルクローズ市場では、ジーンズ提案に力を入れているブランドは他にもあるが、「大人向けジーンズはストレッチ混で穿き心地に特化したものか、ゆったりしたシルエットで気になる部位を“隠す”ことに重きを置きすぎたものが多い。ウチのように大人の女性がカッコよく、かつ快適に穿けるジーンズは意外と少ない」(行者クリエイティブデザイナー)と自負する。
確かに、本家の「マウジー」は、タイトなシルエットが窮屈すぎる人もいるだろうし、他社では「アングリッド(UNGRID)」(マークスタイラー)は乗り換えにはカジュアルテイストが少々強く、「ミラ オーウェン(MILA OWEN)」はもっとベーシック寄り……となかなかいい代案が浮かばない。
バロックジャパンリミテッドは収益力回復に向けて経営資源の集中を進めており、その方針の一環として、比較的規模の小さい「ブラックバイマウジー」は休止を余儀なくされた。ただ「マウジー」の看板を背負ったブランドの影響力はその数字以上に大きく、「このジーンズしか穿けない」と思っていた女性も一定数いたことだろう。
突然のブランド休止により、彼女たちはしばらくジーンズ難民になるしかないのだろうか。“救世主”の登場が待たれる。