創業者のジル・サンダーが三度ブランドを去り、トップ不在のデザインチーム体制で臨んだ「ジル・サンダー(Jil Sander)」の2014-15年秋冬コレクションが開かれた。"三度目の正直"として13年春夏コレクションで表舞台に復帰して以来、ジルによる「ジル・サンダー」は完成度とコマーシャル性を回を追うごとに高めていただけに、彼女無き現行体制によるコレクションを不安視する声もあったが、デザインチームは、そんな杞憂を払しょく。最新のテクニックで見た目のユニークさと肌触りを高めた素材を、複雑なカッティングで、シンプルに見せるというブランドの哲学を忠実に守り、ミラノメンズ初日のトップブランドに輝いた。個人のキャラクターを際立てないデザインチーム体制だからこそ、「ジル・サンダー」らしいシンプリシティがいかんなく発揮されたとも言えるかもしれない。
コレクションは、"視覚においては刺激的、触角においては快適"な素材により構成された。例えば序盤は、水玉模様をエンボス加工した、ムースのような素材をハイブリッドしたショートコートやジャケットなど。袖の一部やヨークに用いた水玉模様のファブリックは、ユニークな視覚効果を生み出しているが、ムースのような素材ゆえ着心地が良さそう。また、アノラックやひざ丈のチェスターコートなどに描かれた複雑なモチーフは、ツイードを原型が維持できないくらい伸ばしたり縮めたりすることで生み出したもの。フランネルにはチンツ加工(通常は熱と圧力で生地の光沢感を出す加工のこと)を施し、シャイニーな一面をプラス。ネオプリンとレザーをボンディングした素材も用いている。
しかし、こうした素材から生み出したのは、いずれも努力を感じさせないシンプルなフォルム。ドロップショルダーのナチュラルなショルダーラインは、そのまま縦にストンと落ち、ユルくはないがリラックスしたシルエットにまとまっている。また、ハイウエストのパンツもノータックなのに太ももからひざにかけてはふんわり膨らみ、その後テーパード。バナナのようなシルエットは、ブランドが得意とする複雑なパターンから生まれるものだ。
カラーはダークグリーンやブラック、そしてライトからダークまでのグレーなど、秋冬らしい。シンプルに見せるフォルムと秋冬らしい色使いという潔さは、結局、素材本来の面白さを際立たせた。
【ジル・サンダー 2014-15年秋冬ミラノ・メンズ 全ルック】