ロンドンから始まった2014-15年秋冬メンズにおける最大のトレンドは、ビッグボリュームのコートが主役のレイヤードスタイルだ。「エルメス(Hermes)」は、そんなトレンドを最高の素材で表現した優等生。チャコールグレーをベースとしたダークなカラートーンで、低い位置でセットインすることでほのかに広がるAラインのコートを主体に、3ボタンのジャケットとショルダーボタンのハイネックシャツ、スリムストレートのパンツなどを上品にスタイリングする。アクセントとなったのは、1つのスタイル、もしくは1着に同居するドライとウェットの質感だ。
例えば、ピリング(毛玉)加工の大きなステンカラーコートは、生地が毛羽立つくらいドライな質感。これに若干光沢を放つセットアップやラバーのような光を放つラムスキンのシャツなどを合わせれば、上半身だけでドライとウェットが同居。ピンストライプのスーツにシルクのタイを組み合わせたスタイルも同様だ。一方で、身頃部分に用いたフランネルと、前立て部分に使用したレザーをニードルパンチでつなげたジャケットは、一着の中でドライなフランネルと艶っぽいレザーが同居したもの。こうしてモノトーンのスタイルにさまざまなニュアンスを加えた。
仕上げは、モッズコートやアビエイタージャケットなど、ビッグボリュームのコートで作る迫力だ。もちろん、身頃にクロコダイル、袖にレザーを用いたテディブルゾンなどは、フォルムというより、ゴージャスな素材で静かに迫ってくる。