渋谷を象徴するファッションビルとして、訪日外国人客が多く訪れるのが渋谷109だ。若者に人気のアーティストとのタイアップで話題をふりまき、ファッションとエンタメのトレンドに敏感な若者に刺さるイベント企画にも力を入れている。SHIBUYA109エンタテイメントの丸山康太SHIBUYA109渋谷店総支配人に好調要因を聞いた。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年8月26日号会員限定特別付録「ビジネスリポート2024年上半期」からの抜粋です)
WWD:2024年上半期の商況は?
丸山康太SHIBUYA109渋谷店総支配人(以下、丸山):売上高は前年同期比9.2%増。予算も前年をクリアした。3月は気温の低下で春物が動かず初めて前年を割ったものの、4月以降は非常に好調で一安心した。5月はエンタメ系コンテンツが非常に良く、INI限定店、アニメの「ウィンドブレイカー」やアイドルのジャムズコレクションのポップアップイベントがヒット。また、春のリニューアルの反響がよく、コスメブランド「セルブ」との複合店を初出店した「ダーリッチ(DARICH)」と、常設初出店のD2Cブランド「ピウム(PIUM)」が牽引。それぞれ開店初日に800万円と500万円を売り上げ、以降も予想以上の売れ行きで、周辺店舗にも良い影響が出ている。
WWD:他に好調だったブランドは?
丸山:絶好調なのは「リズリサ(LIZLISA)。海外SNS拡散力が圧倒的で、ブランド認知度が上がり訪日客の売り上げが全体の約半分を占めている。日本ならではのテイストが海外でウケており、サイズ対応できている。接客力も高く、店長が物怖じせず海外客にもしっかり売っているところも高評価。同じくSNS戦略が上手な「シークレットハニー バイ ハニーバンチ」も国内外の客から支持。コラボレーション企画の投入タイミングが良く、話題作りに寄与している。他にも「エピヌ(EPINU)」は引き続き売れている。好調ブランドはSNS発信力があり、プロパー商品がしっかり消化できる構図ができあがっている。
WWD:特に効果的だった取り組みは?
丸山:館の45周年を記念して4月28日にスタートしたNewJeansとのタイアップが爆発的にヒット。アパレルを売った1階「リミテッドポップアップブリッジドット(以下、ブリッジ)」とグッズを売った地下1階「DISP!!!」にドーム公演に向けたアイテムを求めるファンが行列を作り、爆発的に売れた。ラブジーンズ企画を立ち上げてY2Kを意識したデニムコーデを館内で訴求する企画を提案したところ、40近くの店舗が手を挙げてくれて良い反響があった。若者の間でトップファッションアイコンの彼女たちと取り組めたことは、ブランディング効果も絶大だった。館の開業記念日ということで他にもさまざまな施策を打ったこともあり、その日の来館者数が4万2000人で、今年1番の集客になった。
WWD:コスメは?
丸山:1階の「ドレステーブル バイ シンクス ビューティー パレット」が「シャネル(CHANEL)」を導入したところ、売り上げが急上昇。「ディオール(DIOR)」と「シャネル」がそろうセミセルフ店舗は少ない。
WWD:ポップアップスペース「ブリッジ」の手応えは?
丸山:3月のオープンから続けて13ブランドのポップアップを開催し、概ね好評だ。館のファッション感度を高める狙いではあるが、売り上げも好調。ファンをしっかりつかんでいるD2Cブランドは、リアル店舗にもちゃんと来店してくれる。4月に開催した「ビーデン(BEEDEN)」は特に良かった。内装や什器がそろい、ウインドーも活用できて路面店感覚でオープンできることに加え、立地が館内で一番良いことはブランド側にとってのメリットも大きいだろう。コスメの「アニヴェン」もよく売れた。短期集中で売りたいという声とリピートの要望もすでに届いており、11月まで出店スケジュールは埋まっている。
WWD:訪日客売り上げについては?
丸山:全館売上高の免税額比率は16%に上がり、免税対応店舗は54店舗になった。特に大盛況だったのが6月。前年同期比2倍の2億円を売り上げた。アニメ「ウィンドブレイカー」のポップアップ効果が大きく、中国人バイヤーの行列が絶えなかった。施策では主に台湾や韓国に向けた販促キャンペーンをSNSに絞って打ち出している。メタ社と組んで、海外への発信力が高い日本人インフルエンサーと一緒に館内体験動画を2回配信した。今後は、秋にお土産企画を計画。「OMIYAGE」というワードは海外で浸透しており、おすすめ商品を集めて9月にカタログとSNS配信を展開する。
WWD:今後の計画は?
丸山:8月に8階「DISP!!!」を拡大するほか、9月にかけて店舗のリニューアルと新店導入を行う。また、この秋も暑さが続くと見込んで、秋冬物の販促企画を強化。新しい取り組みとして11月にブラックフライデーを開催する。いつもと違うショッピング体験が楽しめるイベントを企画している。暖冬における秋冬ファッションの売り方は重要課題としてしっかり取り組んでいきたい。