ジル・サンダー本人が去り、デザインチームによる初のコレクションとなった。去り際にサンダーが「しっかりとしたチームがあるから私抜きでも大丈夫よ」と言っていたように、創業デザイナーの考え方はチームにきちんと受け継がれている。素材とフォルムへのこだわりから生まれる着心地の良さと、繊細な色使いが与えるピュアで温かな印象、アートフィーリングを感じさせるバッグなど。いずれも「ジル・サンダー(JIL SANDER)」のコードを踏まえたものだ。
"ソフトテクノジャージー"やボンディングシルクを使ったドレスは生地をバイアスに使用することで着た時に動きを与え、ダブルフェイスのカシミヤは背中やウエストのラインを丁寧になぞることで適度なゆとりのあるミニマムなシルエットを生んでいる。グレープフルーツやザクロといった果物からインスパイアされたパステルカラーは花柄のニードルパンチなどで控え目な装飾の役割を果たしている。
どれも"問題はない"仕上がりだが、ミラノコレを代表する「ジル・サンダー」にはそれ以上を期待してしまう。シンプルな服こそ、緊張感や美意識を端々まで行き届かせることが必要だ。その結果、服つくりに携わるすべての人やショーを作る人、そして見る者にも美意識を共有させることができるからだ。「ジル・サンダー」にはやはり、チームを束ねるクリエイティブ・ディレクターの就任を期待したい。
【ジル・サンダー 2014-15年秋冬コレクション 全ルック】