ロダン美術館の庭に作った白い仮設テントの天井には数え切れないほどの照明が取り付けられ、ネオンサインのように緑、青、黄色と色を変えてゆく。前シーズン、「ディオール(DIOR)」が同じ場所に用意した演出は、色鮮やかな庭園の世界だった。自然から街へ、描く世界観は大きく変わった。「今シーズンは庭園での楽しみよりも街で感じるスピード感を表現したかった」とラフ・シモンズ。そして街といっても華やかで刹那なパーティナイトの女性ではなく、パワーとエネルギーにあふれたキャリア女性のイメージ。そのため、マスキュリンをベースに、ディテールでフェミニンな要素を加えたテーラード・スタイルを提案した。
主役は、ピークドラペルやダブルブレスト、ホールボタンを用いたマスキュリンなテーラードのスーツ。先シーズン、スティレット・ヒールのシューズを飾ったスニーカーの紐は、今季はジャケットの背中や脇に配するレースアップとして取り入れた。レースを緩めればフォルムもゆるく、タイトに締めればコルセットのようにボディコンシャスなフォルムをつくる。
ピンクや赤、黄色やブルーの鮮やかな色は「ディオール」の永遠のテーマである"フラワー・ウーマン"から。スーツの上に羽織るオーバーサイズのコートは5分丈の袖が花弁のように広がっている。スポーティなタンクトップドレスのレイヤードも新しい提案。はっきりとしたパステルカラーやヴィヴィドカラーが目に眩しいダブルフェイスカシミアのドレスは、大胆に入れたスリットをアールデコ調のジュエリーで留めている。
実用性と華やかさを兼ねそろえたスーツの提案は、ラフ・シモンズによる「ディオール」の新しい顧客獲得につながりそうだ。
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