ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、中国専門ジャーナリストの高口康太さんがファッション&ビューティと小売りの視点で分かりやすく解説します。今回のテーマは、中国最大のバーゲンイベント「ダブルイレブン」。期間の長期化によるテコ入れの効果や日本ブランドの売れ行きについて、中国大手ECモールのデータ分析サービスを手掛けるNintの堀井良威(よしたけ)経営戦略担当に話を聞きました。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月16日号の転載です)
PROFILE: 堀井良威/Nint経営戦略担当
われわれはアリババグループ、JDドットコム、バイトダンスのドウインECの販売データを収集、分析している。その結果から全体の売り上げは1ケタ台の成長だったと推計している。各種報道では2ケタ台と報じられていることも多いが、これは返品前の推計だ。実売に基づくわれわれの推計の方がより実態に近い。
中国ECにおける返品率上昇は大きな課題の一つになっており、ダブルイレブンの値引きクーポンは「累計300元購入で50元引き」といった形式で発給されるため、注文して値引きクーポンを入手してから返品する人が多い。また、中国では理由を問わずに返品OKという販売方式が増えており、「同じ服を複数サイズで購入、試着して合わないサイズは返品」といった買い方が増えている。そのため例年より返品率は高く、15~20%に達したもようだ。ただし、プラットフォーム企業も対策に着手している。いずれは返品率の上昇にも歯止めはかかるだろう。
2024年はV字回復!?「ダブルイレブン」取引額の推移
さて、不景気といわれながらもプラス成長を記録した背景には、大きく二つの要因がある。第一に期間の長期化。どのプラットフォームもセール期間を長期化させており、10月中旬から11月11日、ほぼまるまる1カ月がセール期間となった。前年から3週間近く延びている。日常的な買い物までセールの売り上げに計上されたことになる。
第二に家電買い換え補助金だ。冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコン、コンピューターなどが対象で、購入金額の15~20%(1製品あたり最大2000元まで)が補助される。中国政府は総額3000億元(約6兆1900億円)を拠出するという。日本企業を含め、電機メーカーには追い風になったほか、補助金で浮いたお金をほかの消費に回せるようになったことで、幅広い分野に恩恵をもたらしたと考えられる。ただし、耐久消費財の補助金は需要の先食いという側面もあるため、来年以降の売り上げにマイナスの影響が出る可能性はある。
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