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長期化でテコ入れの「ダブルイレブン」、戦略なき日本ブランドは淘汰!?

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ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、中国専門ジャーナリストの高口康太さんがファッション&ビューティと小売りの視点で分かりやすく解説します。今回のテーマは、中国最大のバーゲンイベント「ダブルイレブン」。期間の長期化によるテコ入れの効果や日本ブランドの売れ行きについて、中国大手ECモールのデータ分析サービスを手掛けるNintの堀井良威(よしたけ)経営戦略担当に話を聞きました。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月16日号の転載です)

PROFILE: 堀井良威/Nint経営戦略担当

堀井良威/Nint経営戦略担当
PROFILE: (ほりい・よしたけ)1981年生まれ、栃木県出身。立教大学卒業後、2005年アドウェイズに入社し、日本国内のデジタルマーケティング事業に従事。その後中国の広告・マーケティング事業責任者、台湾子会社の役員を経て、21年Nintに入社。現在は中国を拠点として中国企業の日本市場進出及び日本企業の中国事業においてビッグデータを活用したビジネス支援を担当

われわれはアリババグループ、JDドットコム、バイトダンスのドウインECの販売データを収集、分析している。その結果から全体の売り上げは1ケタ台の成長だったと推計している。各種報道では2ケタ台と報じられていることも多いが、これは返品前の推計だ。実売に基づくわれわれの推計の方がより実態に近い。

中国ECにおける返品率上昇は大きな課題の一つになっており、ダブルイレブンの値引きクーポンは「累計300元購入で50元引き」といった形式で発給されるため、注文して値引きクーポンを入手してから返品する人が多い。また、中国では理由を問わずに返品OKという販売方式が増えており、「同じ服を複数サイズで購入、試着して合わないサイズは返品」といった買い方が増えている。そのため例年より返品率は高く、15~20%に達したもようだ。ただし、プラットフォーム企業も対策に着手している。いずれは返品率の上昇にも歯止めはかかるだろう。

2024年はV字回復!?「ダブルイレブン」取引額の推移

さて、不景気といわれながらもプラス成長を記録した背景には、大きく二つの要因がある。第一に期間の長期化。どのプラットフォームもセール期間を長期化させており、10月中旬から11月11日、ほぼまるまる1カ月がセール期間となった。前年から3週間近く延びている。日常的な買い物までセールの売り上げに計上されたことになる。

第二に家電買い換え補助金だ。冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコン、コンピューターなどが対象で、購入金額の15~20%(1製品あたり最大2000元まで)が補助される。中国政府は総額3000億元(約6兆1900億円)を拠出するという。日本企業を含め、電機メーカーには追い風になったほか、補助金で浮いたお金をほかの消費に回せるようになったことで、幅広い分野に恩恵をもたらしたと考えられる。ただし、耐久消費財の補助金は需要の先食いという側面もあるため、来年以降の売り上げにマイナスの影響が出る可能性はある。

深掘りで見えた、日本企業苦戦の原因

高成長時代には勝ち組は爆増、負け組でも成長だったが、現在は違う。伸びているカテゴリと落ち込んでいるカテゴリがまだら模様で入り交じっている。ペット食品やトイレタリーは、販売金額がプラスでも販売件数の伸び率の方が大きい、つまり1件当たりの単価が落ちているデフレ分野もある。

 さらに深掘りすると、日本企業の苦境が目立つ。全体は大きく伸びているのに、日本は国際OTC医薬品(薬局やドラッグストアなどで処方箋なしで購入できる医薬品のこと)、ベビーおむつなどがマイナス成長になっている。日本企業全体で見ると、そのパフォーマンスはマーケット全体を下回るものだった。
その要因はどこにあるのか?マーケット全体よりも悪い結果なので、「中国経済の停滞」は理由にならない。また、福島原発処理水の海洋放出の影響も今年はないだろう。23年に最も影響を受けたはずの食品、スキンケア、メイクアップはすでに回復しているからだ。私の見立てでは2つの要因がある。第一にマーケティング予算を抑えたため。中国に関するネガティブなニュースが多く、予算を増やさなかった企業が多かった。成長を諦めてでも経費を抑えるという決断をしたわけだ。

もう一つの要因はより深刻だ。すなわち、中国現地企業をはじめとする他国企業にシェアを取られたという問題だ。

ジャパンプレミアムはあてにできない

「中国ブランドが台頭しているとはいえ、基本は低価格品ばかり。プレミアムではメード・イン・ジャパンが強い」と認識しているビジネスマンは多いが、すでに状況は変わり、中国ブランドもプレミアム帯で台頭している。かつては高級品だった日本ブランドのおむつや健康食品はすでに平均的な価格となっている。メード・イン・ジャパン製品でも同じ価格だと中国ブランドが選ばれるケースも増えている。

日本ブランドだから高くても売れるという時代は終わった。その価格に見合う価値を訴求する必要がある。特別な価値を示せなければ、中国人向けに開発し、中国市場を熟知したローカルブランドの方が強いのは当然だ。中国を狙う日本メーカーは、自分たちのブランドの価値とはなんなのかをよく理解し、その価値に合った中国での価格戦略を展開する必要がある。日本で売れたものを中国に持っていく、日本の販売価格に輸出コストを乗せた価格で販売するという思考停止のマーケティングでは勝ち目はない。

逆に言うと、きちんと価値を訴求できて、それに見合った価格戦略を実施できるならば、中国企業がプレミアム帯に進出したカテゴリでも勝負はできる。注目しているのは生理用品だ。現在、カビの発生や原材料を減らすなど、中国ブランドの品質問題が大きな注目を集めている。中国ではやはり、外資系の方が信頼できるという機運が高まっている。こうしたチャンスが到来した時に、安全安心という価値を持つブランドにはチャンスが回ってきそうだ。

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