パントン・カラー・インスティテュート(PANTONE COLOR INSTITUTE以下、パントン)は、2025年の「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」に“モカ・ムース(Mocha Mousse: Pantone 17-1230)”を選出した。
名前の響きからも、柔らかさとチョコレートの香りを連想させる“モカ・ムース”。味わい深いという意味合いだけでなく、華やかさと官能的な暖かみも感じさせる。パントンのリアトリス・アイズマン(Leatrice Eiseman)=エグゼクティブ・ディレクターは、「味覚的にも触覚的にもとても魅了される色。気が散ることも、圧倒されることもなく、心地よさと快適な印象を持つ」と説明する。また選出の理由として、「味わってみたい、触ってみたいという感覚を喚起し、誰をも引き付ける魅力の高さで選ばれた。ドライフラワーなどの自然なものの中にあればとても有機的に見えるし、ファッションではエレガントで憧れを抱かせる性質を持っている」と話す。
地味なイメージから憧れの色になったブラウン
パントンの調査によれば、ブラウンはかつて「土っぽい」いうイメージが多かったが、2000年公開の映画「ショコラ」などをきっかけに大きく変わり始めた。ジュエリーブランド「ル・ヴァン(LE VIAN)」の“チョコレート・ダイヤモンド”と名付けた高品質のブラウンダイヤモンド、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」によるブラウンのサテンスカートとスパンコールのトップスのイヴニングスタイルなどを例に、ブラウンがデザイナーの間で、クラシカルなイメージを超えて人気を集めていることを強調した。さらには、カマラ・ハリス(Kamala Harris)米副大統領がここ数カ月、「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」のダークブラウンのパンツスーツや「クロエ(CHLOE)」のカーキのスーツを頻繁に着用。女優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)やモデルのアレクサ・チャン(Alexa Chung)、ジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)、プレシャス・リー(Precious Lee)、ペイジ・ハード(Paige Audrey-Marie Hurd)も、2週間の間に行われたイベントにブラウン系をセレクトし、レッドカーペットに登場した。「ブラウンの色合いは洗練されていて、瑞々しく、気取らない。地味な印象から、憧れを抱かせるリュクスなイメージになった」とアイズマン=エグゼクティブ・ディレクター。
また“モカ・ムース”は、多くの人々が“疲れ切った一年”の後に欲し、くつろぎのひと時を象徴する色でもあり、「チョコレートを一口食べたり、コーヒーを飲んだりして、自分のために過ごす時間としてほしい」と話した。昨年の「カラー・オブ・ザ・イヤー」には、触れたくなるような優しい印象の色合いの“ピーチ・ファズ(Peach Fuzz: Pantone 13-1023)”が選ばれており、“モカ・ムース”と合わせて、人々の心に寄り添う色として、今後数年間は人気が続くと予想している。