伊藤忠商事の繊維カンパニーは、子会社の経営支援を強化する。同社は10月、約1826億円を投じたデサントへのTOB(株式公開買い付け)が成立し、安定的に基礎収益300億円を稼ぐ体制が整った。これまで傘下のブランドや子会社は本体からの出向者でハンズオン型の経営支援を行ってきたが、今後は外部人材の登用も積極的に行う。また、デサントを筆頭にエドウインや「コンバース」「アンダーアーマー」など主要子会社とブランドの直営店の出店とECも強化する。主要子会社の収益力高めることで「できるだけ早く事業収益で500億円を稼ぐよう引き上げる」(武内秀人・執行役員繊維カンパニープレジデント)考え。
繊維カンパニーの2025年3月期の純利益は、デサントの子会社化に伴う再評価益で730億円を見込むが、期初は330億円と発表しており、一過性の利益を計上しない基礎収益はその近辺になる。武内カンパニープレジデントは「スポーツアパレルはまだまだ伸ばせる余地が大きい。競合他社に負けない成長スピード実現のために100%子会社化する。現在の主力市場である日中韓だけでなく、米国、欧州も含めた全世界で拡大し、成長戦略を加速する」。9月に福岡・天神にゴルフウエアの複合ショップを出店するなどデサントは直営店の出店も拡大する。
直営店はデサントだけでなく、エドウインや「アンダーアーマー」を展開するドーム、数多くのブランドを取り扱うインポートブランドも同様だ。今年はマッシュホールディングスと組み、バッグの「ファブリカ ペレッテリエ ミラノ(FABBRICA PELLETTERIE MILANO、以下FPM)」、「レスポートサック」と立て続けに事業を展開しており、「今後はリテールに強いセレクト企業との提携を増やす」(武内カンパニープレジデント)という。
インポート及びライセンスブランドを数多く取り扱うブランドマーケティング部門も、「フィラ」「コンバース」「ポール・スミス」「オロビアンコ」などで出店を強化するほか、ECも強化する。「ポール・スミス」を展開する子会社のジョイックス・コーポレーションではECが伸びており、こうしたノウハウを他ブランドにも波及させる考え。
注目は、伊藤忠が創業母体となったマガシークを2月に傘下におさめたジェイドグループ(旧ロコンド)との関係だ。伊藤忠とジェイドは、「リーボック」の日本法人RBKJにともに出資する(ジェイド66%、伊藤忠34%)のパートナー関係にあり、また伊藤忠はマガシーク株を引き続き22%保有しており、浅からぬ関係にある。ジェイドは「リーボック」に関してECだけでなく店舗運営にも関与している。ジェイドは自社開発したECの基幹システムやリアル店舗/ECで共通で使えるPOSなども外部にほぼ無料に近い形で提供している。
伊藤忠は全社的に「直営店出店」と「EC」を掲げる中で、どこまで連携するのか。伊藤忠が主体的に展開するブランドの自社ECの多くは、マガシークに運営を委託していたが、武内カンパニープレジデントは「経営母体が変わり、運営体制も変わっており、ブランドの特性に応じた形で検討中だ」と語るにとどめている。