毎回、舞台演出にも力を入れる「プラダ」。今シーズンは、ランウェイを客席より高いところに設置。一部の観客は、ランウェイに開いた"くぼみ"から、モデルを見上げるような舞台を設け、観客が出迎えた。また、BGMには7人で構成するバンドを招へい。1930年代の音楽を奏でながら、ショーが始まった。
ファーストルックは、シャツのように軽く羽織る、ステンカラーコートだった。それ自体は、他のブランドにとっても珍しいものではない、むしろトレンディなアイテム。しかし、ステンカラーコートの襟元からはインナーが良く見えず、まるで裸の上に直接羽織っているように見える。その後続くのは、コクーンシルエットやオーバーサイズ、アシンメトリーなどが当たり前のようになり、一気に複雑化したパターンに反旗を翻すかのようなシンプルなフォルムの洋服。パンツはノータックのストレート、ジャケットも特筆すべきユニークさはなく、基本に忠実なシルエットやディテールばかりだ。そして、コレクションはそこから一転。今度は毛足の長いファーコートをまるで戦士のように、もしくは原始人のように荒々しく羽織ったウォーリアー(闘士)のような男性たちを描く。同時に発表したウィメンズの14年プレフォール・コレクションも、貫頭衣のように原始的なフォルムのウエスト周りだけをシャーリングしたようなレザードレスに毛足の長いワイルドなゴートのファーやストールを合わせるスタイリングで荒々しく、逞しい。一部のニットはワンショルダーで、もう片方の肩周りはオーガンジーの布で隠したようなフォルムだ。
あくまで推察に過ぎないが、ミウッチャ・プラダは、原始の単純だからこそ力強い生活やスタイルに思いを馳せ、それを21世紀に甦らせたのではないだろうか?そう考えると、"くぼみ"の開いたランウェイは、まるで原始人が住居とした「ほら穴」のように見える。最小限に絞った素材、一切の余分を排除したデザイン、そして狩猟で手に入れた獲物の皮をはぎ身にまとったかのような原始的ファーコート。時にアイロニーなメッセージを込めるミウッチャが、現代の問題点を突き、大昔の魅力を説いたような気がする。
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