顔を覆うベールが、スタイルのムードチェンジャーになりそうな兆しです。リアルシーンへの浸透はこれからですが、ラグジュアリーブランドからの提案が相次いでいます。ベールはロイヤルファミリーの着用でおなじみの通り、ノーブルで女性らしい雰囲気をまとえるのが特徴。ミステリアスやフェティッシュ、ゴシックなどのムードを呼び込んだ新しいスタイリングも打ち出されています。
例えば「トム ブラウン(THOM BROWNE)」は、フォーマルを着崩す新解釈で取り入れました。小説家エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)の作品から着想を得たゴシックテイストのルックにベールを投入し、得意のテーラードスタイルにダークファンタジーな世界観を盛り込みました。今回は、国内外のブランドによる思い思いのアイデアを参考に、ベールの効果的な使い方をご紹介します。
艶美なミステリアス×フォーマル
最もベールらしいムードと言えば、“ミステリアス”でしょう。黒との相性は抜群で、顔周りに妖艶な空気をまとわせてくれます。フォーマルな印象を添えられるのもベールの魅力です。
「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」は、マニッシュなタキシードジャケットをミニドレスのように着こなして、顔のほぼ全面をベールで覆い、艶美な印象を濃くしました。斜めにかぶった帽子が貴婦人のような品格です。
主張抑えめベールでフェティッシュに
網目が目立ち過ぎないベールは主張が強くないためいろいろな装いとなじみやすく、ドレッシーな雰囲気を高めてくれます。
「ニナ リッチ(NINA RICCI)」は、肩周りのボリュームをたっぷりあしらったブラウスに、レザーのタイトスカートを合わせ、顔にほのかな陰を落とした黒いベールが、レディーライクな雰囲気をプラス。大胆な編み柄のレースタイツとのコンビネーションが、フェティッシュなムードを印象付けています。
素肌見せで引き算したオールブラック
黒のベールを使ってモード感を出すには、全体をダークカラーでまとめた装いが良いでしょう。透けないアイテムと組み合わせると、ベールのレーシー感が際立ちます。
オールブラックがシグネチャーといえば、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」。顔にかぶせたベールと、胸元の素肌が見え隠れして、ブラックスタイルに“差し色”のような効果をもたらしています。アートライクな立体的シルエットが、単色使いによってさらに際立ちます。
白系ベールでほんのりロマンチック
黒のイメージが強いベールですが、近ごろは肌なじみのいい白やベージュなども増えてきました。普段使いしやすいのが“非ブラック”の良さ。白系は、清らかさや上品なイメージもプラスしてくれます。
「ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)」は、シャツジャケットとパンツの気負わないセットアップに、頭から白ベールをかぶせて素肌の透明感を引き出しています。足元はあえてパイソン柄ブーツでスパイスを添えました。白ベールが、気高くロマンチックな雰囲気を加えています。
チュール包みで幻想的なムードを演出
網目の細かいベールはウエディングドレスでおなじみですが、頭全体をアートピースのようなベールで包む新提案も登場しました。最も目立つポジションを飾るパーツだけに、ミニマルな装いにスパイスを加える効果も大です。
バレエコアの先導役「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」は、チュール使いが巧み。オールブラックの服でも、ボトムスはチュールスカートでレッグラインをほのかに透けさせています。一方、顔周りはベージュのチュール素材のベールですっぽりカバー。袋状に包み込む演出で小顔効果を引き出しつつ、謎めいた浮遊感もまとわせました。
スカーフ一体型でより華やかに
本来ベールは顔を覆うアイテムですが、もっと広範囲をカバーするタイプもあります。赤系カラーで染めたベールは、フェミニンであでやかなムード。スカーフやショールのように使えば、装いに彩りを添える効果を発揮します。
フェティッシュなテイストが持ち味の「フェティコ(FETICO)」は、ロンググローブを合わせたドレッシーな装いで貴婦人ムード。妖艶さを高めたのは、ベールとネックウエアが一体化したレースショールの使い方で、ミステリアスな雰囲気を醸し出しています。胸元にかぶせて、素肌の露出度を抑えるのにも役立ちました。
ベールは、ドレスアップしたいシーンで一歩抜け出せるアイテムです。まだ日本で見かける機会は多くありませんが、スタイリング次第では新鮮さを与えてくれそうなので、早めに試すなら今が取り入れ時。自分好みの帽子と組み合わせたアレンジも可能です。ミステリアスやノーブルなムードを手軽にまとえるベールは、新しいムードチェンジャーとしての可能性を秘めています。