会場に入ると、「エトロ(ETRO)」がスーツを生産するプーリア地方の職人をカメラに収めた写真展。彼・彼女の顔は、ランウェイ前方の巨大なスクリーンにも投影され、はにかみつつも誇らしげな表情を見せている——。「エトロ」の2014-15年秋冬コレクションは、ファミリービジネスとして続くブランドだからこそ、長年苦楽を共にしているスーツ職人たちへのオマージュを表現。「ハッピー テーラリング」と称し、良く遊び、良く食べ、良く眠るからこそ袖を通す気にもなるし、実際着こなせる、ハッピームード全開のチェックのセットアップを連打した。チェックはウィンドーペンに始まりギンガムに至るまで多種多様。いずれもコートとジャケット、ジレ、そしてパンツを同じ柄に統一し、チェック・オン・チェックのスタイルにまとめている。
職人たちへのオマージュで特に感動的だったのは、コレクションの終盤。しつけ糸をそのまま残した未完成のスーツを着たモデルが、定規を模したテープを張り巡らせたジャケット姿の職人と一緒にランウェイに歩いてきたシーンだ。彼・彼女たちは、普段ならバックステージはおろか、ミラノから遠い町で黙々とスーツを作り続けている人たち。そんな彼らがミラノで、自分の作ったスーツを着たモデルとともに、ランウェイを自信満々に歩いた。フィナーレでデザイナーのキーン・エトロは、自分よりも職人を前に歩かせて観客の拍手を彼・彼女たちに直接浴びせる。その感動的なコンセプトは大勢を共感させ、涙と感動を誘った。